JSEM 電子音楽カレンダー/2016 年 5 月のピックアップ

 

 

JSEM 電子音楽カレンダーでは、担当の川崎弘二が、カレンダーに掲載されている各種イベントを「今月のピックアップ」として月イチでご紹介しております。

今回は、2016 年 5 月 10 日にリリースされた委細昌嗣さんの CD「Title fit I felt it」をピックアップいたします。委細さんに電子メールでお話しをお伺いしました。

 

1007079883

 

委細昌嗣 Title fit I felt it

MISAI001 2016年05月10日発売

http://diskunion.net/jp/ct/detail/1007079883

 

 

■委細さんのプロフィールには「2010 年までジャズギターを菊地 晃氏に師事。現在、商業音楽理論(バークリーメソッドによる和声理論)、並びに多層的律動構造(ポリリズム)を菊地成孔氏に師事」とあります。これまでの音楽家・作曲家としての歩みについてお話しいただけますか。

学生時代は、友人のバンドでギターを演奏していましたが、それまで音楽を習ったり勉強をしてきたことがなく、自分の演奏に限界を感じまして、大学卒業後にジャズギターを菊地 晃氏に師事しました。

ジャズにもともと興味があったわけではありませんが、たまたま入ったスクールがジャズスクールで、そこからジャズに興味を持ちました。そのころからフリージャズや現代音楽に興味をもち現在のようなスタイルの音楽製作を少しづつですが開始いたしました。

その後、私の興味が音楽を演奏するよりも作品制作の方に興味が湧いてきまして、本格的に音楽理論を勉強したいと思い、2013 年より菊地成孔氏に音楽理論を師事しております。

homepage
http://star.gmobb.jp/m.isai/

soundcloud
https://soundcloud.com/masashi-isai/

 

■ 2013 年にはリュック・フェラーリのテープ・アーカイブを使用したコンクール「プレスク・リヤン賞」に応募された作品「 Oto no tegami 」が、審査員の椎名亮輔さんによると「友人の声による鉄道のアナウンスについて、何を言っているかわからないが、それを軸に音楽がよくまとまっていると高評価を得ていた」とのことです。このコンクールに応募された経緯や「 Oto no tegami 」という作品についてお話いただけますか。

まずリュック・フェラーリさんの事は、お亡くなりになられた後にリリースされた CD で知りまして、本当に素晴らしい作曲家だと思っていました。

その時期くらいにプレスク・リヤン協会日本支局の twitter でコンクールの事を知り、作品を是非聴いて頂きたいと思い応募致しました。

私の作品「 Oto no tegami 」は、リュック・フェラーリさんのアーカイブ音源を彼からの音の絵葉書、手紙と考え、彼に返信をするような作品にしようと考えて、タイトルを「音の手紙」にしました。

手紙なので、何処から送られたのかという「音の手紙」の消印というか切手のようなものが必要だと思い、作品の最初と最後に私の町の音と最寄り駅のアナウンスを入れました。

本来なら本物の駅のアナウンスを使用したいところでしたが、権利関係上の問題で鉄道会社から許可がおりず、鉄道会社勤務の友人にアナウンスをお願いしました。以上のような経緯で、私の作品には友人の声が入っております。

「プレスク・リヤン賞」に応募してリュックさんの音源に触れることが出来たのは、本当に貴重な経験で勉強になりました。応募して本当に良かったです。

 

■今回発売された CD「 Title fit I felt it 」は、CD を利用したメディア作品のようです。CD には 97 のトラックが収録されており、1 トラックごとに「アルファベットと日本語の文字、平仮名」が割り当てられ、再生の順序によって、曲が生成されるという仕組みのようです。このようなメディア作品を構想されるに至った経緯や、この CD 作品についてお話しいただけますか。

私が今まで製作しておりました作品は、パソコン上のソフトで管弦楽等の音を使用し製作された、ただ録音されるだけの作品でライブ演奏を行えないものばかりでした。

そのような際に本で読んだクリスチャン・マークレイ氏の演奏に対するインタビューで「レコードに録音された素晴らしい作品に敬意をもっていますが、録音された音楽は剥製と同じで生きたものでないので、音楽を生きた形で使用するために演奏している」というような内容の記事に感銘を受けました。それから自分なりに録音物の剥製化から如何に音を開放するかを考え始めました。

私は今年 37 歳で、日常において音楽作品に接するときは、CD で接してきた世代です。なのでレコードでもなく、mp3 でもなく CD というメディアでしか表現できない作品を製作したいと思い製作しました。

その方法論として、以下のような、この作品の試聴方法に3つの方法を作りました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
①全ての曲で1曲。
1曲目から最後まで聴くと CD のタイトルの「 Title fit I felt it 」という曲になります。

②文字から曲になる聴き方。
例えば 20 曲目「 T 」、15 曲目「 O 」、11 曲目「 K 」、25 曲目「 Y 」、15 曲目「 O 」の順番で再生しますと「 Tokyo 」という曲になります。

③ランダム再生。
アルバムを複数台の CD プレイヤーでランダム再生させて、CD プレイヤー同士が、あたかもセッションしているようになります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

特に「③ランダム再生」ですが、CD プレイヤーは mp3 のランダム再生と違い、曲と曲の間に曲のサーチ時間が生まれますので、mp3 では再現できないセッション感が生まれます。

以上ような方法で録音物の剥製化から、私なりに音を開放する作品に致しました。

 

■今年の 1 月には、CD「Title fit I felt it」の曲をライブで上演されたようですが、ライブではどのような形態で演奏されたのでしょうか。また、SoundCloud なども含めた録音再生メディアに記録された作品と、ライブでの演奏とのあいだにはどのようなアプローチの違いがございますでしょうか?

録音再生メディアに関しましては、今回の CD も3つの試聴方法がありますが、基本的には録音されたものが時間軸にそって順番に流れてきます。

ライブ演奏では私が CDJ を使いましてその場でリアルタイムで作品をコラージュして行くことにより、ライブ演奏そのものがリアルタイムで行われるリミックス作品であり、リアルタイムで行われる録音物の剥製化からの音の解放になります。

ちなみに今回の作品が 97 トラックある理由は、文字数が 97 文字あるので 97 トラックですが、他の理由としましては、リアルタイムで様々な形のコラージュ作品にするためのライブ演奏の事も考えまして、なるべくトラック数を多い作品をと思い、私の 1st CD「 Title fit I felt it 」は 97 トラックになりました。

 

■今後のご活動の予定についてお話しいただけますか。

6/9 に東京の七針で舞踏家であり音楽家の山田有浩さんの舞踏のライブに音で参加します。

5/11 にも山田有浩さんの踊りに山田さんが製作した音をリアルタイムで編集して参加しましたが、6月のライブは、5月よりも山田さんの空間を活かすような音にしようと考えております。

それと私自身まだ1枚目の CD を出したばかりですが、既に6枚目のアルバム分のコンセプトがありまして現在2枚目と3枚目の CD 製作を同時に開始しております。

今回リリースしました CD「 Title fit I felt it 」も、6月のライブも次のアルバムも皆さんご興味もっていただけるように今後も頑張ってまいります。

最後になりましたが、川崎様、日本電子音楽協会の皆様 今回は貴重なインタビューの機会本当にありがとうございます。

 

■ますますのご活躍を期待しています。どうもありがとうございました!

 

 

■お知らせ
JSEM 電子音楽カレンダー 今月のピックアップ」は、2016 年 7 月で2周年となります。これを期に「今月のピックアップ」は終了することといたします。あと2ヶ月ほどではございますが、自薦、他薦を問わず、インタビューなどのご希望がございましたら、川崎までお知らせください! どうぞよろしくお願い申し上げます。

■お知らせ その2
委細さんのご厚意により、 CD「委細昌嗣 Title fit I felt it」を2名さまにプレゼントできることになりました。ご希望の方は、2016 年 5 月 31 日までに、川崎までお知らせください。抽選の上、CD をプレゼントいたします。

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JSEM電子音楽カレンダー/今月のピックアップ特別篇「電子音楽なう! vol. 5 in 大阪」3

 

 

JSEM電子音楽カレンダーでは、担当の川崎弘二が、カレンダーに掲載されている各種イベントを「今月のピックアップ」として月イチでご紹介しております。

2016 年 3 月 18 日 (金) に日本電子音楽協会の主催により、BEARS(大阪)にて、コンサート「電子音楽なう! vol. 5 in 大阪」が開催されます。

先日公開いたしました、JSEM電子音楽カレンダー/今月のピックアップ特別篇「電子音楽なう! vol. 5 in 大阪」1JSEM電子音楽カレンダー/今月のピックアップ特別篇「電子音楽なう! vol. 5 in 大阪」2に引き続き、「電子音楽なう! vol. 5 in 大阪」にご出演される由雄正恒さんに、今回のコンサートについてのお話しを電子メールでお伺いしました。

 

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電子音楽なう! vol.5 in 大阪
2016 年 3 月 18 日 (金) 開場:18:30 開演:19:00
会場:BEARS(大阪)
料金:¥2,000

 

成本理香 / The Sealed Forest II for flute and electroacoustics(フルート: 丹下聡子)
Molecule Plane / Acousticophillia
門脇 治 / オーロラ #2.5
RAKASU PROJECT. / 見えない音
石上和也+かつふじたまこ+泉川獅道 / Wabient Sabient – 侘び縁と 寂び縁と – ver 0.0
由雄正恒 / Air No. 3 for Leap-motion and Max (2016)

 

企画構成:石上和也、かつふじたまこ、泉川獅道、由雄正恒
主催:日本電子音楽協会
お問い合わせ:石上和也 mail@neus318.com

 

 

 

由雄正恒さんインタビュー

 

■日本電子音楽協会との関わりについて教えていただけますか。

学生の頃、先生や先輩からJSEMのことを聞いていて、定期演奏会に聴きに行ったりしてました。その頃はまだ学生会員という制度もなかったと思います。大学を卒業し、作曲家として成人したのがきっかけで入会したと思います。

 

■今回の「電子音楽なう!」で演奏される作品の内容や 、上演の形態について、現時点でのご予定などお話しいただけますか。

自分はセンサーを作れないので、センサーものには取り組んでなかったのですが、leap motionは既存のセンサーとは違った楽器としての面白みと可能性を持っていて、技術者ではない者でも、音楽とテクノロジーの勝負ができるのではないかな、と妄想して作っている作品シリーズの第3番をお届けします。

 

■「電子音楽なう!」は広い意味での電子音楽の「現在」を提示するイベントなのではないかと思います。ご自身の作品における「現在」の要素について教えていただけますでしょうか。

常に現在進行形で考えていきたいと思ってます。過去の振り返りもあり、過去の刷り直しという部分も見えるかもしれませんが、一つ、「あ、この要素は、今まで考えなかった」という発見ができればいいな、と思ってます。

 

■聴衆のみなさまに向けて、一言お願いいたします!

気楽に真面目にごゆるりと

 

 

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JSEM電子音楽カレンダー/今月のピックアップ特別篇「電子音楽なう! vol. 5 in 大阪」2

 

 

JSEM電子音楽カレンダーでは、担当の川崎弘二が、カレンダーに掲載されている各種イベントを「今月のピックアップ」として月イチでご紹介しております。

2016 年 3 月 18 日 (金) に日本電子音楽協会の主催により、BEARS(大阪)にて、コンサート「電子音楽なう! vol. 5 in 大阪」が開催されます。

先日公開いたしました、JSEM電子音楽カレンダー/今月のピックアップ特別篇「電子音楽なう! vol. 5 in 大阪」1に引き続き、「電子音楽なう! vol. 5 in 大阪」にご出演される 成本理香さん、石上和也+かつふじたまこ+泉川獅道さんに、今回のコンサートについてのお話しを電子メールでお伺いしました。

 

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電子音楽なう! vol.5 in 大阪
2016 年 3 月 18 日 (金) 開場:18:30 開演:19:00
会場:BEARS(大阪)
料金:¥2,000

 

成本理香 / The Sealed Forest II for flute and electroacoustics(フルート: 丹下聡子)
Molecule Plane / Acousticophillia
門脇 治 / オーロラ #2.5
RAKASU PROJECT. / 見えない音
石上和也+かつふじたまこ+泉川獅道 / Wabient Sabient – 侘び縁と 寂び縁と – ver 0.0
由雄正恒 / Air No. 3 for Leap-motion and Max (2016)

 

企画構成:石上和也、かつふじたまこ、泉川獅道、由雄正恒
主催:日本電子音楽協会
お問い合わせ:石上和也 mail@neus318.com

 

 

 

成本理香さんインタビュー

 

■日本電子音楽協会との関わりについて教えていただけますか。

現在、名古屋市立大学芸術工学部の水野みか子研究室の研究員をしておりまして、その関係で昨年入会いたしました。大昔(?)、母校の愛知県立芸術大学に在学中に作曲や電子音楽を師事した先生方や卒業生の方々が協会設立の頃から関わっておられたので、協会主催のコンサートなどには、よく足を運んでいました。

 

■今回の「電子音楽なう!」で演奏される作品の内容や 、上演の形態について、現時点でのご予定などお話しいただけますか。

今回の作品を作ろうと思ったきっかけは、親しい友人でもあり私のフルートのための作品のほとんどを初演しているフルート奏者、丹下聡子さんが何人もいたらいいのになあと、妄想したことです。彼女には昔から「森」をテーマに作曲した作品をよく演奏してもらったので、今回もそうしました。

上演の形態としては,フルート演奏と電子音響ですので、とくに目新しくないとは思いますが、現時点では、丹下さんの音が電子音響からも沢山聞けるような作品になる予定です。

 

■「電子音楽なう!」は広い意味での電子音楽の「現在」を提示するイベントなのではないかと思います。ご自身の作品における「現在」の要素について教えていただけますでしょうか。

もともと、あまり自分の作品における「現在」ということを考えずに作曲する方なので、今回の作品でも特別「現在」の要素を感じられるものかどうかは自分ではわからないのですが、自分自身だけのことについて言えば、この数年間妄想して来たことを形に出来るということでは、私の「現在形」と言えばいいかもしれません。

 

■聴衆のみなさまに向けて、一言お願いいたします!

コンサート自体は、様々なタイプの作品が聴ける面白いものになりそうですし、私自身もとても楽しみにしていますので、ぜひ会場に来て色々な音楽を楽しんでいただきたいと思います。

 

 

石上和也+かつふじたまこ+泉川獅道さんインタビュー

 

■日本電子音楽協会との関わりについて教えていただけますか。

2000 年に、パリ INA-GRM にて開催された、ミュージック・コンクレートの夏期アトリエに参加したのを機に、毎年東京で開催されている CCMC(コンテンポラリー・コンピュータ・ミュージック・コンサート)に継続して参加させて頂くことになり、そこで由雄さんをはじめ、たくさんの作曲家の方とつながりを持つようになりました。遅ればせながら、昨年入会させて頂きました。よろしくお願いします。(かつふじたまこ)

 

■今回の「電子音楽なう!」で演奏される作品の内容や、上演の形態について、現時点でのご予定などお話しいただけますか。

石上と泉川、石上とかつふじのセッションは、これまでも幾度かありましたが、三つ巴での演奏は初の試み!

Wabi 担当の泉川が虚無僧尺八を奏で、Sabi 担当のかつふじが鍵盤ハーモニカ他でポツリポツリと語り出し、ent 担当の石上が自作シンセサイザーで包み込む、「侘び縁と寂び縁と」。予測不能なトキメキ音物語をお楽しみください。

 

■「電子音楽なう!」は広い意味での電子音楽の「現在」を提示するイベントなのではないかと思います。ご自身の作品における「現在」の要素について教えていただけますでしょうか。

作曲においても技術の進化は日々進み、アイデア次第で様々な音を作り出すことが容易になってきています。

しかしそんな現在においても、初めて音を記録することができた時代に作曲家が感じたであろう驚きとトキメキ、そして何気ない身の回りの音への愛着と探究心は忘れずに、アート界に限らず今の私たちを取り巻く様々な状況、思いを常に敏感に感じ、体の中にきちんと落とし入れ、今を生きる私たちの音を出せたら、それが「なう」かな、と。

 

■聴衆のみなさまに向けて、一言お願いいたします!

「電子音楽ってなに〜??」という方もお気軽にいらしてくださいね。

一緒にのんびりと「音」を楽しんで、わいわいしましょう (^∇^)/

(文責:かつふじたまこ)

 

 

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JSEM電子音楽カレンダー/今月のピックアップ特別篇「電子音楽なう! vol. 5 in 大阪」1

 

 

JSEM電子音楽カレンダーでは、担当の川崎弘二が、カレンダーに掲載されている各種イベントを「今月のピックアップ」として月イチでご紹介しております。

2016 年 3 月 18 日 (金) に日本電子音楽協会の主催により、BEARS(大阪)にて、コンサート「電子音楽なう! vol. 5 in 大阪」が開催されます。

このコンサートにご出演される Molecule Plane(大塚勇樹)さん、門脇 治さん、RAKASU PROJECT.(落 晃子)さんに、今回のコンサートについてのお話しを電子メールでお伺いしました。

 

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電子音楽なう! vol.5 in 大阪
2016 年 3 月 18 日 (金) 開場:18:30 開演:19:00
会場:BEARS(大阪)
料金:¥2,000

 

成本理香 / The Sealed Forest II for flute and electroacoustics(フルート: 丹下聡子)
Molecule Plane / Acousticophillia
門脇 治 / オーロラ #2.5
RAKASU PROJECT. / 見えない音
石上和也+かつふじたまこ+泉川獅道 / Wabient Sabient – 侘び縁と 寂び縁と – ver 0.0
由雄正恒 / Air No. 3 for Leap-motion and Max (2016)

 

企画構成:石上和也、かつふじたまこ、泉川獅道、由雄正恒
主催:日本電子音楽協会
お問い合わせ:石上和也 mail@neus318.com

 

 

 

Molecule Plane(大塚勇樹)さんインタビュー

 

■日本電子音楽協会との関わりについて教えていただけますか。

大阪芸術大学大学院を卒業後、昭和音楽大学の由雄先生にお誘い頂き、入会しました。何年も所属している割に、日本電子音楽協会のイベントに出演するのは実は初めてです。

 

■今回の「電子音楽なう!」で演奏される作品の内容や 、上演の形態について、現時点でのご予定などお話しいただけますか。

「Molecule Plane」名義で現在制作中のアルバムより新曲を演奏する予定で、この名義での作品をアクースモニウムで上演する事はこれまでに何度かありましたが、ライブ形式では初です。

「Acousticophilia(=音響性愛)」というタイトルですが、これは作品名というよりも制作中のアルバムのテーマのようなものです。

 

■「電子音楽なう!」は広い意味での電子音楽の「現在」を提示するイベントなのではないかと思います。ご自身の作品における「現在」の要素について教えていただけますでしょうか。

ここ数年は「Acousticophilia」という言葉の意味にあるように、音色と音響に特化し、持続的なサウンドでありながらも、さながら「ドローン・パンク」「アンビエント・パンク」とも呼べるようなエッジの効いたものを目指して作り続けているわけですが、同時に「オーディオ的に矯正されない音楽/オーディオ的に正しいとされることからの逸脱」でもあると思っています。そしてそれは、音楽として聴きにくかったり耳が痛くなったりといったヒステリックな要素を取り除いていくこととは全く矛盾しません。

また、素材となる音や音楽そのものはあくまで録音されたアナログ・シンセサイザーの音やフィールド・レコーディングに基づいてはいるのですが、それって実は物凄く今っぽいというか、ここ数 年の電子音楽にとっての現在進行形の大切な要素ではないかと思います。

 

■聴衆のみなさまに向けて、一言お願いいたします!
例えば「癒し」と「暴力衝動」といったような、一見正反対に位置するようなものでも実は一つの音楽に同居し得ると考えています。そういった事を可能にし、また等しく扱うことができるのも電子音楽の醍醐味だと思いますので、是非体験しに来てください。

 

 

門脇 治さんインタビュー

 

■日本電子音楽協会との関わりについて教えていただけますか。

仙台で電子音楽と言えば、日本電子音楽協会の理事をされていた岡﨑光治先生です。仙台電子音楽協会設立および演奏会をお手伝いさせていただきましたが、その後彼に薦められて日本電子音楽協会に入会させていただきました。定期演奏会や「なう」に何度か出品させていただいております。現場に立ち会うことが一番です。

 

■今回の「電子音楽なう!」で演奏される作品の内容や、上演の形態について、現時点でのご予定などお話しいただけますか。

#2 はピアノの生演奏を伴います(まさに今演奏し終えたところ)が、#2.5 は生音なしで演奏してみます。

 

■「電子音楽なう!」は広い意味での電子音楽の「現在」を提示するイベントなのではないかと思います。ご自身の作品における「現在」の要素について教えていただけますでしょうか。

ピアノのサンプリング音源の音響はもの凄く進歩していますが、ハーモニクスの音響は市場にないと思われます。そこで、ピアノのハーモニクスをサンプリングしたものをメインに構成しようと思ったのが、この作品です。技術的に出来る事と出来ない事においての「現在」。そこでこういうことをやってみようかという私の「現在」。

 

■聴衆のみなさまに向けて、一言お願いいたします!

「なう」を共有しましょう。

 

 

RAKASU PROJECT.(落 晃子)さんインタビュー

 

■日本電子音楽協会との関わりについて教えていただけますか。

石上和也さんからご紹介をいただき、2014 年度に入会いたしました。同年の電子音楽なう!vol. 3 にも出演させていただきました。

 

■今回の「電子音楽なう!」で演奏される作品の内容や、上演の形態について、現時点でのご予定などお話しいただけますか。

今回は、昔の黒電話の音声録音用マイク「テレフォンピックアップ」を使い、様々な電子機器・電気器具類から発せられる電磁波ノイズを拾い、エフェクタ等で加工しながら即興演奏をする予定です。目には見えないけど、そこに確かに存在する何かを探りあてていく試みです。

 

■「電子音楽なう!」は広い意味での電子音楽の「現在」を提示するイベントなのではないかと思います。ご自身の作品における「現在」の要素について教えていただけますでしょうか。

「電子音楽」の「現在」というわけではないのですが、今回の演奏に関して言えば、その時その場にあるものから発するノイズを音源と致しますので、まさに「現在」を炙り出す試みであると考えております。

 

■聴衆のみなさまに向けて、一言お願いいたします!

即興なので、当日どんなふうになるか、本人にも予測できない部分が多々あります。何か、おかしな・面白いノイズの発生する機器をご存知でしたら、ぜひご一報ください。

 

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電子音楽なう! Vol.5 in 大阪 ( 20160318 )

電子音楽なう! Vol.5 in 大阪
2016年3月18日(金)
18:30 開場
19:00 開演
料金:2,000円
会場:Namba BEARS ( http://namba-bears.main.jp )

 

出演:

成本 理香
The Sealed Forest II for flute and electroacoustics
(フルート: 丹下 聡子)

Molecule Plane
Acousticophillia

門脇 治
オーロラ #2.5

RAKASU PROJECT.
見えない音

石上 和也+かつふじ たまこ+泉川 獅道
Wabient Sabient – 侘び縁と 寂び縁と – ver0.0

由雄 正恒
Air No.3 for Leap-motion and Max (2016)

 

企画構成:
石上 和也 かつふじ たまこ 泉川 獅道 由雄 正恒
主催:
日本電子音楽協会

お問い合わせ:
石上 和也 mail@neus318.com

電子音楽なう!20160318out 電子音楽なう!20160318ウラout

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JSEM電子音楽カレンダー/2016年2月のピックアップ

 

 

JSEM電子音楽カレンダーでは、担当の川崎弘二が、カレンダーに掲載されている各種イベントを「今月のピックアップ」として月イチでご紹介しております。

2016 年 2 月に開催されるイベントから、1 月から 2 月にかけて NTT インターコミュニケーション・センターにて開催されている「オープン・スペース 2015 情報科学芸術大学院大学[IAMAS] 車輪の再発明プロジェクト #6」をピックアップいたします。こちらのイベントにて作品を発表されている johnsmith さんに電子メールでお話しをお伺いしました。

 

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オープン・スペース 2015 情報科学芸術大学院大学[IAMAS] 車輪の再発明プロジェクト #6

日 程:2016 年 1 月13 日 (水)〜
会 場:NTT インターコミュニケーション・センター(東京)

johnsmith / 超超短距離電信装置 (2016)
johnsmith / Choose one, if you want. (2016)
johnsmith / 運動ーコイルと磁石の場合 (2016)
大島拓郎 / ソノラマ「このはら」(2016)
高見安紗美 / Strip Sound Source Speaker (2016)
上田真平 / 1 / 0 / 1 (2016)
佐藤大海 / ふれる 分離されたピックアップの機構と振り子によるエレキギター (2016)
具志堅裕介 / BODY/SHADOW (2016)

http://www.ntticc.or.jp/Exhibition/2015/Openspace2015/Works/Re_inventing_the_Wheel_j.html

 

■ johnsmith さんは 2013 年から 2015 年にかけて情報科学芸術大学院大学(IAMAS)にて学ばれています。IAMAS へと進まれた経緯や IAMAS でのご研鑽などについてお話しいただけますか。

intro
IAMAS への入学を志したきっかけは学部時代の恩師の助言です。

元々私は多摩美術大学の久保田晃弘教授と三上晴子教授のもとで学んでいたのですが、学部四年の中盤頃、将来を決めあぐねていた私は一念発起して何としてでも大学生活を延長したい、優雅なるモラトリアムこそ人間を成長させる最も尊きものであろう、と思い大学院への進学を考え始めていました。

しかし、大学というのは閉鎖的な環境なので、あまり他の大学との関わりもないし、この頃のわたしは作品制作以外全くしていないという状況でしたので、他の学生以上にその傾向が強かったんです。関東圏の予備校生が東京藝術大学と五美大(女子美術大学、多摩美術大学、東京造形大学、日本大学藝術学部、武蔵野美術大学)を目指すのと同じように、漠然と芸大かタマビの院が良かろう、と思ったわけですね。ところが、先立つものがない、という現実的な問題に直面するわけです。となると学費が高い私立美大であるタマビはどうやっても志望できないわけです。というわけで藝大を受けるか、しかし藝大は学部時代に 2 次試験の面接で落ちている。講師陣もさして変わっていない訳で、正味な話受かる訳ないだろうと思ってました。

で、そんな時にIAMASの存在を知ったんですね、ドイツ留学の時や様々な進退を決める時に助言をいただいていた三上先生に「マルちゃん(本名由来のあだ名)なら城くんがいいんじゃない?」と言われて、それから現在の主査である城一裕先生について調べてみました。

入学してからは基本的に身体表現を主に研究していたのですが、あるとき三輪眞弘教授の『インターネット・ストリーミングに接続された筋肉刺激装置による「流星礼拝」』というパフォーマンスを見たんですね。それですごい衝撃を受けた。ここで全部やられてるわけです。僕のやりたかったことが、もう、全部。

簡単に説明してしまうと、システム的には電気を筋肉に流して表情を変化させる真鍋大度さんの『electric stimulus to face』と似たようなシステムなのですが、この作品では鈴を持った演者の腕に電極を取り付けて、電気刺激で腕を強制的に運動させて演奏させるんです。ここで舞台に立つ人というのは、全く訓練を受けていない、というかもっと言えば、電気刺激で動く筋肉さえ持っていればいいわけです。演劇やダンスなどで言われる、「特権的肉体」の全く存在しないパフォーマンスなわけです。まさに僕が理想とする舞台表現だったんですね。おそらく後にも先にも僕はあれより素晴らしいパフォーマンスを見ることはないでしょう。というわけで、僕はそれを見て一度パフォーマンスからは離れたものを作ってみるべきだ、と思ったんです。それから城先生のもとで音響学に基づく作品制作を始めました。

 

■2013 年11 月にスロヴェニアにて開催された、MFRU(International Festival of Computer Arts)、同年 12 月の九州大学における「インターカレッジコンピュータ音楽コンサート2013」などで、johnsmith さんはパフォーマンスで参加されています。こうした機会に行われたパフォーマンスについてお話しいただけますか。

寺山修司の詩に「踊りたいけど踊れない」という言葉があります。

学部時代から僕はデジタルデバイスを使った身体表現の研究していました。ダンスなどの専門的な教育を受けていない人間がいかに人前に立つことができるのか、という観点で制作した作品群がこれらのイベントで上演された作品になります。

これらの作品は僕自身の、楽器が演奏できたりダンスができる人に対するルサンチマンの発露で、つまりシャイで人前に立つのが苦手な自分がいかにして彼らより目立つことができるか、という試みだったんですね。まず踊れない人というのはリズムが取れません。楽器ができない人というのは楽譜が読めませんし(一応ちょっとは読めますが)、耳障りのいい音を奏でることができません。そのような障害をいかにして乗り越えることができるかと考えて、コンピュータ技術やセンサー類を使って踊れない理由を一つ一つ潰していく、という工程を経ています。

はじめは YAMAHA の「Miburi」というウェアラブル楽器を参考に、音楽に合わせて体を動かすのでなく、体の動きによって音を生成することで、逆説的にその行為をダンスと言い張れないか、という方向性を模索しました。

2010 年に多摩美術大学内で行った最初の上演はひどいもので、システム的には靴に仕込んだスイッチを踏み込むことでリズムを構成し、指の曲げで音響を作っていく、というものだったのですが、まずリズムを作ることができず、指の曲げだけだと体の動きを規定するものが何もないので、結局このデバイスだけでは踊ることができず、ただ私が赤面するばかりでした。

その後、音響をリズムに依拠しないアンビエントなものに、体に複数のセンサーをつけ体の傾きなどの様々な情報を使って音響を生成するのではなく、身体の動きによって音響を制御する、という構造を持たせました。能動的に踊る、というのは素人には難しいですね、拍子はずれな動きをした時に笑われるのではないか、みたいな恐怖がある。だから構造的に踊るのではなく、踊らされる、踊らざるを得ない、そういう構造を持たせるべきだろう、と。

それでなんとか人前で踊れるようになりました。そうなってくると今度は舞台を演出したくなってくるんですね、でもシャイだから他のスタッフさんにやってもらうのではなく自分一人でなんとかしたい。というわけで山川冬樹さんの電球を使った心音のパフォーマンスと、クワクボリョウタさんの『 10 番目の感傷(点・線・面)』を参考に自分の身体を電球によって壁面に大きく投影する。というアイディアを思いつきました。電球との位置関係で作り出す影は舞台の背面や客席にも届きます。自分の身体によって干渉できる範囲を舞台から客席まで拡大するわけです。

こうやって出来上がったパフォーマンスが『This is not.』です。その後、この作品で用いた電球との位置関係で映像表現のように自分の身体よりも大きなイメージ(視覚情報)を操作できる、という点に興味が移り、電球の発する電磁波を身体をアンテナにして受信し音響を生成する『Electro Voice』を制作しました。その制作の延長で、電気信号を自分の体を通して、舞台上のオーディオ端子に接続されたもう一人の人間に接触することで通電させ、人間を通過した電気によるノイズ音響を作り出すパフォーマンス『彼と彼女の間に流れる電流の相互関係に見る彼と彼女の関係性について』を制作しました。

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現在では自分で演じるのではなく、舞踏譜を記述することで他人に踊ってもらう、という方向にシフトしてきています。これまでの作品では自分が踊れないことをごまかすために要素過多になる傾向が強かったので、演者に伝わるように舞踏譜を記述する過程で本当に見せたいものを絞り込むような制作手法を試みています。

 

■ 2014 年 11 月に洗足学園音楽大学にて開催された「インターカレッジ・ソニック・アーツ・フェスティバル 2014」と、2015 年 2 月に開催された「IAMAS 2015」において、「Toru: モスキート音によって年の功を逆転させるあそび」を発表されています。この作品の詳細は先端芸術音楽創作学会の会報に掲載されていますが、ご自身のパフォーマンスと「Toru」のような作品は、ご自身ではどのような関係にあるとお考えでしょうか。

僕にとってはこれらの作品とパフォーマンス作品に優劣をつけるというような意識はないです。ただ、僕自身、身体表現にしてもなんにしても何かしらの専門家であるというふうには考えていないので、それぞれの分野から得たものを使って、芸術というフィールドで自分の見たいものや体験したいものが作れたら、というのは動機としてあります。

Toru

Toru: モスキート音によって年の功を逆転させるあそび」は元々モスキート音を使えば子供にだけ情報を伝えることができる、という気づきから出発しています。社会的にネガティブなモスキート音の用いられ方を逆転して、従来この超高周波からの攻撃にさらされている子供達にとってポジティブに用いることができるのではないか、というアイディアでした。もともとは子供だけが聞き取ることのできる音の舞踏譜というものを考えていたのですが、優劣がハッキリ出るものの方が良いだろうと思い、遊び、ゲームという形式をとることにしました。

この作品では、言い方は悪いんですが簡単に言ってしまえば、子供に親や周りの大人を明確に見下せる機会を与えたかったんです。「僕はこんなこと簡単にできるのに、お父さんやお兄ちゃんにはできないんだ。」みたいな。僕は性格が悪いので、人間の醜いところがよく見えたらいいな、と思ってものを作ります。調子に乗った子供の醜さとか、「子供に負ける」ということを極端に恐れる大人の醜さとか、逆に「子供に負けてあげる」ということを進んでする大人の醜さとか、ぜんぶ。

 

■ICC にて開催中の「車輪の再発明プロジェクト」では、「技法:(1) コイル、(2) 磁石、を与えられたものとせよ」というテーマに基づく「超超短距離電信装置」「Choose one, if you want.」「運動ーコイルと磁石の場合」の 3 作品が展示されているようです。これらの新作についてお話しいただけますか。

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これらの作品群は Jess Rowland らの平面スピーカーの研究 [1] を踏まえ、スピーカーの最小構成単位をコイルと磁石と捉えてスピーカーを再発明する試みとして制作されています。これらに用いられている技術要素は IAMAS 在学中から研究していたものです。アンテナなどの電波や電磁石の発する電磁気を作品制作に応用しようといろいろな実験を重ねていたのですが、これらはその成果とも言えるものですね。基礎的な知識のみでアンテナやスピーカーを自分の手で作りながら発見した現象を提示しています。

期せずしてこれらの現象は工学の世界では技術的に非効率であったり、より優れたものが発明されて忘れ去られていった技術の引き起こすものととても似通っています。現状用いられている音響技術によるものとは異なる音響体験を提示するこれらの作品群は城講師の推進する「車輪の再発明プロジェクト」の理念 [2] に沿って言うならば「ありえたかもしれない今」を提示するものといえるでしょう。

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今回の ICC での「車輪の再発明プロジェクト」第 3 期展示の『(1) コイル、(2) 磁石、を与えられたものとせよ − 最小構成単位に分解されたスピーカーによって提示される“振動”』は、同プロジェクトと連携して、僕の作品制作の方法を“技法”として分離し、様々な人に作品を制作してもらうというものです。今回は車輪の再発明プロジェクトの所属学生もこの技法を用いて作品を制作しており、この技法による 7 点の作品が展示されています。

この“技法”という考え方は 1 期、2 期展示で展示された『予め吹きこまれた音響のない(もしくはある)レコード』や、『写植文字盤による多光源植字』、現在も同研究開発コーナーに展示されているクワクボリョウタ准教授の『針穴をあけた紙を通したRGB光源による網点プロジェクション』などの同プロジェクトが本年度の ICC で展示している手法を踏襲しています。

僕が作った技法を共有して異なる現れが見えるというのは、舞踏譜を記述して演者に上演してもらった時に、必ず演者によって異なるものになる、という一つの作品を作る上での協力関係とそれによる相乗効果にも似ています。

 

■今後のご活動の予定についてお話しいただけますか。

すでにご質問の中で話題にしていただいていますが、2016 年 2 月 28 日まで NTT インターコミュニケーション・センター(ICC)の研究開発コーナー「車輪の再発明プロジェクト」展示の中で、僕の提案した技法『「(1) コイル、(2) 磁石、を与えられたものとせよ」− 最小構成単位に分解されたスピーカーによって提示される“振動”』の展示が行われています。この展示も踏まえた研究会の記事も後日アップロードされる予定です。

また、僕の作品は展示されていない期間になりますが、3 月 5 日の午後 2 時から ICC で車輪の再発明プロジェクトの展示に関するギャラリートークが行われるので、そちらもよろしくお願いします。

2 月 25 日から 28 日の間岐阜県大垣市ソフトピアジャパンセンタービルで行われる「IAMAS 2016」にも、プロジェクトの成果発表と、パフォーマンス作品を上演の予定です。

また来年度では 5 月 8 日に八王子音楽祭で開催される「多摩美の音楽実験室 2016 堆積と分散」にパフォーマンス作品を出品の予定です。

この度はインタビューいただきありがとうございました。

 

[1] Jess Rowland, Flexible Audio Speakers for Composition and Art Practice, Leonardo Music Journal No. 23, MIT press, pp.33-36, 2013.
[2] 車輪の再発明プロジェクト 研究概要(http://www.iamas.ac.jp/projects/145

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JSEM電子音楽カレンダー/2016年1月のピックアップ

 

JSEM電子音楽カレンダーでは、担当の川崎弘二が、カレンダーに掲載されている各種イベントを「今月のピックアップ」として月イチでご紹介しております。

2016 年 1 月に開催されるイベントから、今回は趣向を変えて、川崎がお手伝いしているイベントを紹介させていただきたいと思います。

ということで、1月29日(金)に、京都芸術センターにて開催される「檜垣智也 アクースマティック作品による 音の個展」をピックアップいたします。このコンサートに映像でご参加される映画監督の七里 圭さんから、電子メールでコメントをいただきました。

 

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檜垣智也 アクースマティック作品による 音の個展
日 程:2016年1月29日(金) 19:00開演
会 場:京都芸術センター
料 金:前売:2,000円、当日:2,500円、学生:1,500円

http://kojiks.sakura.ne.jp/higaki.html

 

■七里監督は、映画のサウンドトラックについて次のように述べています。

サウンドトラックとは、映されている映像と同じ時間の音の連なりです。
見えているものと聞こえてくるものが、実は分離しているのにシンクロしているから、
人はある世界をそこに感じ、没入してしまう。
それが映画の時間なのだと思います。
この面白さ、不思議さを噛みしめています。
おそらくサウンドトラックという発想は、芝居や踊りの伴奏から、
ごく当たり前に生まれた方式なのでしょうが、それが生演奏や語りではなく、
録音された音に置き換えられたことによって独特のものに変質したのです。
光も音も同じメディアに情報として記録されるようになった今、
映像からサウンドトラックを意識的に引き離し、同期することを体感してみようと言うのが、
このライブ「映画としての音楽」のコンセプトの一つです。

 

■上記した七里監督の文章にもあるように、七里監督は数年前から映画を音から作り始めるという実験に取り組まれており、2014 年4月にライブ「映画としての音楽」が開催されました。そして、このライブで上映された素材などをもとにして、映画版「映画としての音楽」が製作されました。2014 年 11 月に公開された映画版「映画としての音楽」は、2015 年4月に檜垣智也さんの手によってアクースモニウム上映が行われています。

 

■そして、「映画としての音楽」は、オスカー・ワイルド「サロメ」が下敷きになっています。「サロメ」についての関心を七里監督は次のように説明しています。

この戯曲への関心がぼんやりながら高まってきたのは、三年ほど前。
時代の転換点を経験した後のことでした。
ヘロデ王の娘が母のために預言者ヨハネの首を求める、聖書に記されたエピソード。
それが、ワイルドの戯曲が成立する以前から 19 世紀後半の文学や美術の題材として
(とくにフランスで)もてはやされていたと知り、なぜだろうと思いました。
時代の気分――いわゆるデカダンスを象徴したがゆえと解説されていますが、
ではそれはどういう時代だったか考えてみれば、
資本主義が西欧先進国に浸透して、写真やレコードといった複製文化が誕生したころ。
つまり、20 世紀以降、現在に至るまでの社会や文化を準備した時代でした。
そんなことを、のんびりつらつら思い巡らせて一年ほど過ぎたころ、
不覚にも初めて、日夏耿之介訳の「院曲撒羅米」を読んだのです。
衝撃的でした。
研ぎ澄まされた一語一語が喚起する、ただならぬ情感、情景。
文章から、リズムや旋律までもが感じられ、すでに音楽のようでした。
ああ、これだ! と思い“音から作る映画”という構想が一気に浮かんだのです。

 

■その後、2015 年3月には「音から作る映画 2」として七里監督の構成・演出による「サロメの娘」が上演されました。「サロメの娘」では音楽とアクースモニウム演奏を檜垣智也さんが担当され、映像は、紗幕を利用したアナログな方法による3D上映が試みられています。2015 年8月には「サロメの娘」の改訂版がフランスの FUTURA 音楽祭にて上演され、そして、「檜垣智也 アクースマティック作品による 音の個展」において、この改訂版が日本で初めて公開されます。今回の「サロメの娘」の上演について、七里監督から以下のコメントを頂戴しました。

FUTURA で上演された改訂版は初演と何が変わったのかというと、サウンドトラックの一部に音の厚みが増したことと、作品の終始続く語り――1万字を越える日本語テキストの全てを英訳した膨大な字幕を、フレームの上下、そしてプロジェクションの手前と奥をフルに利用し出し続けたことでした。

判読可能かどうかを敢えて考慮せず、現れては消える怒涛のテロップは、英語を母国語としないフランスの人々には、物語を追うことを諦めさせるに十分な効果があったようで、「何だか分らないけど詩だということは分った」というある人の感想(それは実に正しい)の通り、断片的に意の取れる言葉と闇の間に映像がぼんやり浮かび、アクースモニウムで拡張された空間音響と絡み合う、特別な『サロメの娘』の上演になったのでした。

今回の京都上演では、そうした効果は望むべくもないので、もちろん英字幕は一切出しません。けれど、ならば初演と同じものかというとそうでもありません。生まれてから早一年が経つ『サロメの娘』は、成長して、そろそろもう一つの顔を見せることになります。今回は、その変化を暗示する上演になる予定です。

 

■改訂版上演のご成功をお祈りしております。コメントどうもありがとうございました。

 

※引用はすべて、ライブ「映画としての音楽」初演時のプログラムより

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予告:JSEM主催 電子音楽なう!vol.5

2016/3/18(fri) 19時開演 大阪なんば BEARSにて開催決定!!

出演者等詳細決まり次第随時お知らせいたします。

※jsem会員の皆様には作品募集をMLにてご案内しております。

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JSEM電子音楽カレンダー/2015年11月のピックアップ その2

 

JSEM電子音楽カレンダーでは、担当の川崎弘二が、カレンダーに掲載されている各種イベントを「今月のピックアップ」として月イチでご紹介しております。

2015 年 11 月に開催されるイベントから、今月は「その2」として、11 月から 12 月にかけてブリュッセルにて開催される「Ars Musica 2015」もピックアップいたします。こちらの演奏会シーズンにて「ヴィオラと電子音響のための『奇想曲』」の改作が初演され、また、Destellos Composition Competition 2015 のミクスト作品部門にて「室内オーケストラと電子音響のための『ソリトン』」によって佳作 (1位なし3位)を受賞された松宮圭太さんに電子メールでお話しをお伺いしました。

 

マクシム・デセール演奏会 @アルス・ムジカ2015、ブリュッセル

 

Ars Musica 2015 Maxime Desert
日 程:2015 年 11 月 10 日 (火) 19:00
会 場:PointCulture Bruxelles(ベルギー)

Krzysztof Penderecki / Cadenza
Elliott Carter / Fragment 4
Cyrille Thoulen / ἐπαıνέω (épaïnéô)
Philippe Hersant / La Pavane
György Ligeti / Hora Lungà, eerste beweging van de sonate
松宮圭太 / ヴィオラと電子音響のための「奇想曲」

Maxime Desert: viola

http://www.arsmusica.be/Ars/nl/concert/maxime-desert/

 

■松宮さんは、2012 年にフランス国立音響音楽研究所の作曲研究課程(IRCAM Cursus1)を修了しておられます。フランスに渡られた経緯、IRCAMでのご研究、IRCAMにおける制作環境やスタッフ、作曲家とのご交流、IRCAMにて制作された「ヴィオラと電子音響のための『奇想曲』」などの作品についてお話しいただけますか。

フランスではまず先にパリ国立高等音楽院作曲科に入学していて、そこの大学院に進学したのと同時に学校の推薦枠から IRCAM での年間の作曲研究課程キュルシュス1に行きました。キュルシュス1は作曲家に対してプログラミングの基礎知識や IRCAM で開発されたツールの使用法などを伝授しながら各々の制作に応用させる目的の教育的な場で、僕と同じ年に研究課程に入った十数名の作曲家は皆、提出した器楽作品のスコアと動機書によって選抜を受けて入っています。

仲間内には、プログラミングや電子音響音楽の制作経験が一切無い人間から、そうした関心を元から持ち制作してきた人間まで様々でした。2011 年から 12 年にかけて在籍していましたが、ミュライユが 1990 年にこの課程を開設した頃からは講義内容も雰囲気も相当変わっていたと思います。2006 年にキュルシュスが1と2に分かれてからは1の方はより教育色、訓練色が強くなってきたと聞いています。

研究生に与えられる制作環境ですが、良かったと感じたことは、申請しさえすれば 24 時間いつでも使える防音スタジオ、定期的に支給される IRCAM の最新ソフトウェア、そして制作のヒントとなる講義内容でした。機材に関してキュルシュス生がアクセスできるものは決して特別なものではなく、YAMAHA のデジタルミキサーや Apple のデスクトップ PC、RME のサウンドカードに DPA のマイク、そして普通に購入できるメーカーの小中型のモニタースピーカーといった、一般的な教育機関や個人でも頑張れば揃えられそうなものでした。

 

キュルシュス1同期達と
キュルシュス1同期達と @ IRCAM 地下

 

キュルシュス1では MAX に関しては基礎から音響合成、コンサートパッチの組み方までを広範に学びましたが、作曲支援ソフト OpenMusic の訓練の比重はそれほど高くありませんでした。楽譜やシーケンサーで音素材を組む作曲行為に近いと直感的に感じたのが OpenMusic だったので、個人的にあれこれ試しては指導教官に質問に行って学びました。

キュルシュス1の修了制作となったヴィオラと電子音響のための『奇想曲』では、パガニーニの奇想曲を見て感じたことから発想を得て、録音物からフィルターしてシャン・ハーモニックを作ってみたり、関数、放物線の動きとシャン・ハーモニックの組み合わせてみて旋律や和声の動きを作ったり、その録音からまた別のシャン・ハーモニックを作ってみたり、音響合成したりを繰り返して素材を集めました。

その際に用いたツールは OpenMusic 上で動く Csound のライブラリだったり Audiosculpt 上でのスペクトル分析だったり、Pro tools 上の編集機能だったりと、その場その場で使いやすいと思うツールをざっくばらんに選んで使っていました。電子音響と器楽が双方向的な関係にある書法を探す、というのがテーマで、研究の方向性としては地味でしたが、その時に模索したことが現在のプロジェクトや仕事に役立っているので、自分の関心を深める機会が与えられて有り難かったと思います。

 

キュルシュス1修了コンサート、ゲネにて @イルカム, エスパース・ド・プロジェクション
キュルシュス1修了演奏会、ゲネにて @ IRCAM,エスパース・ド・プロジェクション

 

■2013 年 10 月には「パリ国立高等音楽院作曲科修了演奏会」において、「室内オーケストラと電子音響のための『ソリトン』」が、ジャン=フィリップ・ヴュルツの指揮、パリ国立高等音楽院オーケストラの演奏によって初演されています。また「ソリトン」は、2015 年度のデステロス作曲コンクールにおいて佳作 (1位なし3位)を受賞されています。『ソリトン』という作品の成立過程やエレクトロニクスの要素について、また、デステロス作曲コンクールについてお教えいただけますか。

『ソリトン』はパリ国立高等音楽院作曲科大学院の修了作品で、IRCAM の研修を終えた翌年、作曲科在籍の最後の年に制作したものでした。先述の『奇想曲』と同様、電子音響と器楽の書法の関連を焦点に制作に取り掛かりました。電子音響と器楽のためのミクスト作品を作る際にいつも感じることですが、スピーカーから鳴る音と楽器から鳴る音、いずれも音波として客席に伝わるものながら、双方の質感や存在感があり、その違いにどう折り合いと付けるかという問題意識があり、その対応として、楽器音を増幅したりリバーブ処理したりといった方法以外にどういうアプローチができるだろうということを考えていた際にぼんやりと浮かんだのが、音波にもソリトンみたいな現象があってもいいよなぁという思いつきでした。

ソリトンとは川やプール等で発生する自然現象で、波と波が干渉することなく、消し合わずに進行する現象として知っていました。スピーカーから鳴る音と楽器から鳴る音が寄り添いながら進む音波となる、そんなイメージから、スピーカー群とアンサンブル群の両方を二群に分けて対話させるアイディア、騒音から楽音へ、楽音から騒音へという波のフィギュアのアイディア、そのフィギュアを形式に応用するというアイディアが浮かび、オーケストレーションの中に溶けるような音響を意識して電子音響パートをまとめました。

 

室内オーケストラと電子音響のための『ソリトン』初演@パリ国立高等音楽院
室内オーケストラと電子音響のための『ソリトン』初演時 @ パリ国立高等音楽院

 

デステロス作曲コンクールは、アルゼンチンで 2007 年よりデステロス・ファンデーションによって開催されている作曲コンクールです。電子音響音楽を対象としたA部門とミクスト作品を対象としたB部門があります。年齢制限が設定されておらず、過去には審査員の間違いではないかという大御所が応募、入選していたりするので、新人向けなのかそうでないのかわからなかったのですが、B部門に『ソリトン』を出品してみたところ佳作という評価を頂きました。

オーガナイザーのエルザ・ジュステル氏から審査員達の評価、良かった点と課題点を伝えて頂き、励みになりました。かつて習っていた電子音楽のルイス・ナオン先生とプログラミングのトム・メイス先生に報告したところ、僕が連絡する前に結果を見て知っていたようで、驚きました。正直、パリ音楽院の作曲科方面ではあまり知られていないコンクールだと思っていたためです。

 

『ソリトン』スコア、楽器・機材配置図
『ソリトン』スコア、楽器・機材配置図

 

■2015 年 9 月 11 日 (金) ~ 19 日 (土) にかけて大駱駝艦・壺中天(東京)にて開催された「阿修羅」のために、松宮さんは電子音楽を制作されています。こちらの舞台音楽を担当されることになった経緯、今回上演された電子音楽についてお話しいただけますか。

大駱駝艦には古い友人が在籍している関係で昔から何度か公演を見に行っており、パリに来る前にはダンサー達と即興演奏で舞台を共にする機会が時々ありました。今回の舞台で演出・主演をされた鉾久奈緒美さんとは、何年か前にパリでお会いした時に僕の過去の音楽を聴いて頂いていた経緯があり、その時の印象から、今回の制作依頼をして下さいました。

事前にコンセプトイメージを受け取っていたので、それを元に各々のシーンの核になる音楽を送っていましたが、8月末から練習に参加してみると、どんどん洗練されていく舞台の方に合わせて別のタイプの音楽が必要になったり曲の長さの問題が出てきたりして、音楽制作も初演ギリギリまで粘らせてもらうことになりました。ダンサーが踊れる音楽、そして尺の伸縮に対応できる音楽を制作するというのが課題だったという感じですが、周期性とヴァリエーションの展開でこれまでになかった発想を得られる良い機会になりました。

 

大駱駝艦壺中天公演『阿修羅』フライヤー
大駱駝艦壺中天公演『阿修羅』フライヤー

 

大駱駝艦『阿修羅』舞台、主演の鉾久奈緒美氏@壺中天、吉祥寺
舞台の様子(主演の鉾久奈緒美氏)@壺中天、吉祥寺

 

ご略歴には、「2014 年以降はミカエル・レヴィナスの元でオペラ『星の王子様』(オペラ・ド・ロザンヌ委嘱)、ピアノとMIDIキーボードのための『レ・デジナンス』(イルカム, メシアン音楽祭委嘱)、オーケストラのための『橋の秘密』(オーケストラ・バス=ノルマンディー委嘱)、オペラ『変身』改作(イルカム、アンサンブル・ル・バルコン委嘱)等の制作助手を務める」とあります。松宮さんの手掛けておられるレヴィナスの制作助手のお仕事についてお教えいただけますか。

レヴィナス先生の助手としての仕事は、彼のアトリエで彼と一緒にピアノで即興をしたり、求めに応じて機材やアプリケーションをセッティングしたり、指示に従って楽譜の記入やオーケストレーション作業、またはシーケンサー上で作業をしたり、初演時の演奏家や IRCAM のエンジニア等のやりとりにおいて秘書的な役割をしたり、浄書の関係で出版社との取次を行ったりと、まぁキリがありません(笑)。ですが結局、先生の話を聞くのが一番の仕事だと思っています。レヴィナスが退官する直前に分析科で師事していたので、その師弟関係の延長で仕事をしている感じです。

 

レヴィナスと彼のアトリエにて、オペラ『星の王子さま』完成直後
レヴィナスと彼のアトリエにて、オペラ『星の王子さま』完成直後

 

オペラ『変身』改作初演リハーサルにて@アテネ劇場
オペラ『変身』改作初演リハーサルにて@アテネ劇場

 

■2015年 11 月にはブリュッセルで開催される Ars Musica 2015 にて「ヴィオラと電子音響のための『奇想曲』」の改作が初演され、来年はボルドーのアンサンブル・プロクシマサントゥーリのためにギターと電子音響のための新作も初演されるようです。現在の電子音楽の制作環境や、今後、初演が予定されるエレクトロニクスを使用した作品についてお話しいただけますか。

アルスムジカ 2015 では、ヴィオラ奏者のマクシム・デセールの依頼によって『奇想曲』の電子音響パートを改定し、初演される予定です。ターナ・ヴィオラという彼のちょっと変わったハイブリッド楽器のために、電子音響部分のバランスやリアルタイムの処理などを操作しています。今後の予定として、マクシムもメンバーであるターナ弦楽四重奏団と彼らのハイブリッド楽器のために新作を書くプランがあり、その下調べを兼ねたプロジェクトです。

プロクシマサントゥーリのプロジェクトや来年4月のバルセロナにて開催されるフェスティバル・ミクスチュールへの参加は、僕自身も創設者として参加するアンサンブル・ルガールの活動の一環で、自作を発表する場合もあれば音響スタッフとして関わることもあります。現在、モロッコ、フェズで行われるメンバーの作品発表のために録音と映像の仕事で現地のアンスティチュ・フランセで滞在していますが(10 月 27 日)、これもそういった活動の一環です。プロクシマサントゥーリのプロジェクトでもハイブリッド楽器のギターを使用する予定で、電子音響と器楽がより自然に関係する音響を模索しているところです。

 

アンサンブル・ルガール演奏会準備の様子@パリ・ビエット教会
ルガール演奏会準備の様子 @ パリ・ビエット教会

 

アンサンブル・ルガールのメンバー達と@ストゥディオ・ルガール・シーニュ、パリ
ルガールの作曲家達と @ ストゥディオ・ル・ルガール・ド・シーニュ

 

■今後のご活躍を期待しております。この度はどうもありがとうございました!

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JSEM電子音楽カレンダー/2015年11月のピックアップ

 

JSEM電子音楽カレンダーでは、担当の川崎弘二が、カレンダーに掲載されている各種イベントを「今月のピックアップ」として月イチでご紹介しております。

2015 年 11 月に開催されるイベントから、今回は 11 月 20 日 (金) から 23 日 (月) にかけて、アトリエ劇研(京都)にて開催される「桑折 現×木藤純子×中川裕貴『CH』」をピックアップいたします。この舞台作品に参加される中川裕貴さんに電子メールでお話しをお伺いしました。

 

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桑折 現×木藤純子×中川裕貴「CH」
日 程:2015 年 11 月 20 日 (金) 19:00、21 日 (土) 19:00、22 日 (日) 14:00/19:00、23 日 (月・祝) 14:00
会 場:アトリエ劇研(京都)
料 金:A席=2,500円、S席=3,000円 (前売のみ)、B席=1,500円 (音楽鑑賞席)、Z席=8,000円 (各公演1席/前売のみ/鑑賞特典含む) ※A席、B席の当日券は+300円

演奏:中川裕貴、バンド
美術:木藤純子
演出:桑折 現
音響:甲田 徹
照明:筆谷亮也
舞台美術制作:大村大悟

http://ch2015nov.tumblr.com

 

■中川さんは、2008年に同志社大学工学部 情報システムデザイン学科を卒業され、2010年に京都市立芸術大学大学院 音楽研究科(音響心理学/聴覚専攻)を修了されています。芸術大学の大学院に進学された経緯や、主にチェロを用いた作曲・演奏・演出などの活動をされるようになった経緯についてお話しいただけますか。

高校時代より音に興味があり、音楽の情報処理に関する研究が行われていた同志社大学工学部(現在は理工学部)に進学し、柳田益造先生の研究室に在籍しました(余談ですが、柳田先生は1970年の大阪万博において西ドイツ館アウディトリウムでミキサーを務められており、研究室ではその当時のお話しを何度か聴かせて頂きました)。

芸術大学の大学院に進学した経緯ですが、大学のときから、音楽の情報処理やソフト開発より、ヒトの聴覚や音楽に対する認知/認識について興味を持っており(卒業論文は音楽の終止時に感じる調性的期待について、心理実験を元にその認知過程を解析したものでした)、より聴覚や認知に基づいた研究がしたいと考え、津崎 実先生がおられる京都市立芸術大学音楽研究科に進学しました。

大学院では「聴覚における寸法情報の知覚と聴覚情景分析」(こちらの詳しい内容は津崎先生の下記サイトを参照ください)という内容に取り組み、修士課程を修了しました。芸術大学の大学院に進学したものの、演奏や作曲について教育を受けたわけではなく、研究室でただただ心理実験をしていましたので、個人的には所謂「芸術大学」に行っていた感じはあまりしませんでした。

PHAM – 聴覚・音響・音楽心理学の研究室:http://w3.kcua.ac.jp/~mtsuzaki/index.html

 

上記が大学関係における勉学の話しでして、チェロを用いた音楽活動というのはまた別のものになります(但し研究で取り組んでいた音についてのことが自身の音楽演奏活動の根底にあるとは思います)。楽器については、高校時代からエレキベースを演奏しており、確か大学4年生くらいまではエレキベースを演奏していたと思います。

またそのエレキベースについても、いわゆる普通のエレキベースの演奏(バンドの中でベースパートを担当するといったような)とは異なり、エフェクターを大量に繋げ、いわゆる「ノイズ」的な演奏や即興演奏をやっていました。

そしてチェロについてはここ6年くらいで始めたものでして、最初は楽器を譲り受けたことから始めました。エレキベースからチェロへと楽器は変わりましたが、エフェクターなどを使用するスタイルは変わらず、そしてそこから現在に至るまで、少しずつチェロの特性を生かした演奏、また新しい音楽のかたちについて模索している感じです。

またご指摘の通り、私は自分のプロフィールにおいて「主にチェロを用いた作曲・演奏・演出」と書いていますが、私にとってこの3つの事柄(作曲・演奏・演出)は現在不可分なものでして、それぞれについての解説は、頂いた下記の質問の中でお答えできればと思っています。

 

 

■2015 年 10 月には、UrBANGUILD(京都)にて「中川裕貴 連続 10 時間演奏」というコンサートを開催されています。この 10 時間のコンサートの中で「チェロとテープとわたし(テープ録音を断続的に繰り返しながら「テープの中」で別の作品を創る)」、「今日も電気を使う(ライブエレクトロニクス演奏)」という演目がありました。中川さんはチェロに電子機器を介在させる演奏に取り組んでおられますが、どのようなシステムを使用しておられるのか、また、音楽にエレクトロニクスを介在させる意味や意義について、もし、お考えのことがございましたらお話しいただけますか。

あくまでも私見ですが、楽器や声に対して、電気機器(マイクやピックアップなど)を介在させることというのは、本来は電気増幅、つまり音を大きくし、声や楽器の音を遠くまで響かせること(拡声)がメインの目的だったのではないかと思っています。自身もその目的のために使っている部分もありますが、また別のことを考えている部分もあります。

下記に簡単にではありますが、音楽にエレクトロニクスを介在させることについて、自身が注力している点を記載します。

 

・ 楽器の振動がマイクなどによって電気信号に変えられ、(その楽器そのものとは)別のところから音が出ること。

・ 聴者の側ではなかなか聴こえなかった小さな音を無理やりに立ち上げ、そこに存在させること(拡声されることの無かった音の拡声)。

・ 電気的に反復させることで、“私自身”が音を出す行為を反復する必要がなくなること=音と身体が分離する=音が身体の影のようになること。

 

これは最初の質問への回答も含みますが、チェロという楽器は本来アコースティックな響きを楽しむためのものであると思います。また当たり前のことですが、自分の体を直接的に楽器に接触させて音を出す、非常に「フィジカル」な楽器だと思っています。

ただ自身の場合については、そこに「電気/拡声」というものを持ち込み、またそれによって、自身の「手」を音が離れることで(自分が動かなくても音が鳴る/本来鳴らした場所とは異なる場所にも音が在る)、その楽器そのものの音と拡声された音、また演奏者の身体というものが複合的に見えてくる時間を「演奏」と言う行為の中で創りたいと考えています。

そしてメロディーやリズム、音色というものは勿論ですが、前述の手法を重層させたものがまた「音楽」と呼ばれても良いのではないかと感じ、チェロを使用し、それにエレクトロニクスを介在させながら演奏を行うという手法を取っています。

※中川裕貴 連続 10 時間演奏については下記リンクにテキストなどの情報がまとめてあります。
https://www.dropbox.com/sh/ptr24s7g3fhms67/AACbfp7Z046Ua-ZQdkPUnD4Ia?dl=0

 

■2015 年 6 月に結音茶舗(大阪)にて、江南泰佐さんをゲストに開催された「And play=enso on #3 スピーカーと向こうから/ここまで」というトークイベントを開催されたあとに、「この企画でトークをして、また別の現代音楽や電子音楽絡みのトークや音源などを聴いてざっくり思うことは、「現代音楽」というものはもう「ここ」には無いのだなという感覚です」とプログで発言されています。「『ここ』」には無いのだなという感覚」について、もう少し詳しくご説明していただけますでしょうか。

「現代音楽が『ここ』には無いという感覚」は、端的に言いますと、「現代音楽」と言われてきたものよりも現代音楽なものが、その他に存在してきているということだと思います(どういった音楽がそういったことに該当するのかというのは挙げだすとキリがありませんが、周りを取り巻く様々な音楽が現代音楽より現代音楽だなあと思ってしまうことが多くなってきています)。

これはきわめて個人的な感覚ですが、僕はそう思っており、それが自身の活動を続ける理由のひとつにもなっているかと思います。ひとまとめにすることは本来できないのですが、それを承知の上で言いますと、所謂「現代音楽」とは音楽の在り方を様々な角度から更新、或いは「音楽」に対してこれまでとは別の角度から光を当ててきたものであると思っています。

そういうことを前提としたとき、もちろん現代に音楽はありますが、「現代音楽」や「前衛音楽」と呼ばれるものが随分と形式的なものに追いやられてきている気がします(ある意味ではジャンルとして確立したことは良いことだと思っています)。

加えて「音楽というものはやはり美しく、心躍るもの、また使えるものである」、という側面がある意味では昔より強くなっていているのではないかと思っています(世の中的に、余白や余剰を楽しむ余裕がなくなってきているという風にも言えるかもしれません)。

また音楽の革新の可能性の死滅(私見)、また視覚メディアの発達、音楽そのものよりも別のものが語られるようになった、、、などなどいろいろな理由が前述の想い(あくまでも個人的な)を後押ししているところもあります。もちろん時代は変わっていくことは当たり前で、時代に合わせる必要がいつも在るかと言うと僕はそうは思いませんし、そもそも「現代音楽」とジャンル分けすること自体がナンセンスだと思いますが、ただ自分が憧れ、追い求めてきた半世紀以上前のそれと今自身が感じている「現代音楽」の状態には差があることは事実です。

音楽が時代を予言すると誰かが言っていたかと思いますが、「現代音楽がこの時代を捉えることができているのか? それは可能か? そもそもそうする必要などあるのか?」という問いを自分は抱いており、それに対して自分なりの回答をするのが、活動の主たるもののひとつだと思っています。

比喩的で恐縮ですが、「あの暑かった時代に暑さのせいでどうも見過ごされてしまった部分を、少し冷めた現代において、みつめ直すことは意味があることなのか?」という問いを自身も「現代音楽」と関係を持つ中で抱いています。なので「現代音楽というものはもうここには無いのだなという感覚です」という発言は、「現代音楽」というものがもともと持っていた役割を終えてしまうことへの危機感や自身への戒めにという意味も含まれています。

※すみません、ブログの発言が結構思い付きの部分が多いため、理路整然としていない部分があるかもしれません。

 

■中川さんは演劇のための音楽も多く手掛けておられます。2015 年 10 月には京都芸術センターにおいて上演された、柳沼昭徳さんの作・演出による「劇計画 II 戯曲創作『新・内山』」の音楽を山崎昭典さんとともに担当されています。演劇のための音楽は、ほかの作曲・演奏活動と比べてアプローチの違いはございますでしょうか。また、2013 年から3年の期間をかけて制作された「新・内山」では、上演にあたってどのようなご準備をなさったのかお話しいただけますか。

舞台音楽に関しては、まずテキスト(脚本)があること、そしてそのテキストが暗示する状態(時間や描かれる場所、登場人物の心情の機微)というものが在ることが大きいと思っています。先日の演劇計画もそうでしたが、自身が演劇に音楽を付けていくときには、テキストや実際に演技が行われた空間や状態(自分は舞台音楽を生演奏でつけることが多いです)を見ながらそれに合せていくことが多いです。

ですので自身の純粋な演奏「表現」とは異なり、自分の表現や思考を、舞台やその演じられている状態に投射していくことが多いかと思います。書かれたテキストや生身の俳優から立ち上がってくる光景に音で呼応する感じは、その他のものでは得られない経験があります。またそれと同時に意識していることは、「音楽は音楽で在る」ということです。

先ほど言ったことと少し矛盾する部分があるかもしれませんが、テキストや実際に演技が行われた空間や状態に対して、余りに合わせすぎる/説明的な「音楽」というのはなるべく舞台に与えないように気を付けています。テキストや俳優の演技と音楽が「二度同じことをいう」必要はないと思うので(例えば悲しいシーンだからあからさまに悲しい音楽を演奏するなど)、テキストや演技とはある一定の距離を持ちながら、但しある程度の繋がりを持ち、また「俳優」でも「観客」でもないひとつの存在として、「やるヒト」と「みるヒト」の間のイメージの往復に寄与できるような音の情報を与えることができればと考えています。

※勿論演出家から自分が先ほど述べたような「説明的な音楽」を求められればそうしますが、なるべく自分から率先してそういうことはしないようにしているつもりです(とは言ってもチェロという楽器は非常にその音そのものが説明的だと思うので、いつも舞台との関わり方には苦労しています)。

 

■2015 年 11 月 20 日 (金) から 23 日 (月) にかけて、アトリエ劇研(京都)にて開催される「桑折 現×木藤純子×中川裕貴『CH』」というイベントについて、中川さんはウェブサイトにおいて「音楽でありながら、同時に音楽のいく“軌道を外れて”、自身が存在する術をずっと考えてきました。それはずっと矛盾した論理でしたが、それでも今回の舞台がその一つの答えのようなものになります。」と述べておられます。「CH」における「中川裕貴、バンド」での演奏について、現時点でのプランがもしございましたらお話しいただけますか。

「桑折 現×木藤純子×中川裕貴『CH』」というイベントに関して、あくまでも僕個人の考えではありますが、このイベントでは自身の約 10 年の作曲/演奏/演出生活の一つの結実をお見せできればと考えており、自身のこれまでの音に取り組みについて、「コンサート」という名のもと演奏していきます。

またこのイベントでは、自身とその「バンド」の演奏が「劇場」という場所で繰り広げられることも鍵となってくるかと思います。先の回答にあったような「演劇の舞台音楽」としてではなく、舞台で自身の表現を行うというのは、今回が初めてのことですので、普段自分が演奏してきた場所(自分は主にライブハウスなどで演奏をしてきました)との違いや、そこに介在される「演出(桑折 現さん)」や「美術(木藤純子さん)」を大事にしながら、音楽と、またそこから少し距離を取った(つもりの)自身の存在を確認して貰えたらと思います。

また下記の公式サイトにありますように今回の公演では席種についても趣向を凝らしています。普通の演劇ではちょっと考えられない「音楽鑑賞席=舞台上が観られない席=特殊な席でヘッドフォンなどを使用しコンサートを楽しむ」なども用意し、複数の鑑賞の仕方、観客の存在ということも視野にいれた作品になっています。

桑折 現×木藤純子×中川裕貴『CH』:http://ch2015nov.tumblr.com/

 

■リリースが予定されている「中川裕貴、バンド」のアルバム、「音楽と、軌道を外れた」はどのような内容となるのか、お話しいただけることはございますでしょうか。

まずアルバムリリースに際して、準備していますステートメント(仮)を下記に記載します。

 

(今や様々な歴史を見てみても)最早わたしたちが「音楽」を創ってしまっていることに否定はしないし、それは出来ない。音楽は時間の中に「音」という現象を置いていく、その石(意志)のような連なり、または時間を通じた線のような、道筋=軌道。その軌道(音楽の/音楽への道筋の)から外れることに自らを賭けるということ。そういう行いについての「音楽」。

 

楽器を持って何かするということで、「音楽」が出来上がるということは、ある意味では至極当たり前のことで(勿論それだけで良い音楽が出来ないことは理解した上で)、私もそのサークルの中にいるということは自覚しています。

ただしそのサークルの中にいながら、その運動から離れること、音楽(サークル)の引力に立ち向かうこと、音楽が聴かれ消費されていくことと距離を置くことなどなど、、、「そんなことができないか?」という妄想の域を出ないかもしれない問いに対して、自身の存在を賭けた作品です。リリースはもう少し先になりますが、「音楽と、何か併走するもの」を見つけて頂ければ嬉しいです。

 

 

■今後の活動のご予定について教えていただけますか。

「桑折 現×木藤純子×中川裕貴『CH』」が終わりますと、程なくして、来年1・2月に開催されます、「烏丸ストロークロック 『国道、業火、背高泡立草』@三重県文化会館伊丹アイホールパティオ池鯉鮒」の稽古が始まります。

また前述の「中川裕貴、バンド『音楽と、軌道を外れた』」については来年頭のリリースを予定しており、目下録音の編集中となります。

その先については、まだ何も決まっていませんが、個人的に少しライブ活動やコンサート企画を休ませて頂き、自身のソロ活動についての音源や、歌ものバンドswimmの音源準備などを進めていこうと考えています。また「中川裕貴、バンド」については、音源ができ次第、来年は関西以外でもいくつか演奏ができたらと考えています。

 

■ますますのご活躍を期待しております。この度はどうもありがとうございました!

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