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7月 01

JSEM電子音楽カレンダー/今月のピックアップ特別篇「サラマンカホール電子音響音楽祭」1

 

 

JSEM電子音楽カレンダーでは、担当の川崎弘二が、カレンダーに掲載されている各種イベントを「今月のピックアップ」として月イチでご紹介しております。

さて、2015年9月11日(金)から13日(日)にかけて、サラマンカホール(岐阜)にて「サラマンカホール電子音響音楽祭」が開催されます。

このフェスティバルは、サラマンカホールと情報科学芸術大学院大学(IAMAS)が主催し、日本電子音楽協会(JSEM)、先端芸術音楽創作学会(JSSA)岐阜県図書館岐阜県美術館との共催により開催されます。

日本電子音楽協会は、2日目の12日(土)に、「日本電子音楽協会 第19回 演奏会 響きあうバロックと現代」、そして、「テクノロジーと『作曲』の未来 JSSA/JSEM スペシャル・コンサート」というふたつのコンサートを開催します。

そこで「今月のピックアップ」も、「サラマンカホール電子音響音楽祭」に参加される方々を取り上げていきたいと考えております。「日本電子音楽協会 第19回 演奏会」にて新作を発表される大久保雅基さんに、電子メールでお話しをお伺いしました。

 

salamanca
サラマンカホール電子音響音楽祭 ぎふ 秋の音楽祭2015 第2日 6. コンサート
「日本電子音楽協会 第19回 演奏会 響きあうバロックと現代」

日 程:2015年9月12日(土) 14時開演
会 場:サラマンカホール(岐阜)
入場料:一般2,000円[サラマンカメイト 1,800円]/学生1,000円(小学生~大学生 30歳まで・学生証要提示)
http://www.iamas.ac.jp/eams2015/

 

■現在、大久保さんはIAMASで学ばれています。IAMASに進学された経緯や、IAMASでの創作活動などについてお話しいただけますか。

IAMAS以前はミュジック・アクースマティックなどの電子音楽の分野で活動しておりました。主に電子音を使ってスピーカーから再生される音楽を作っていたのですが、録音された音の音色の豊かさ、力強さに惹かれていきました。もう実際に生の音を電子音楽のようにコントロールできないか、と思いそういった研究をするためにIAMASへ入学しました。

IAMASを選んだ理由としては、卒業生や在学生の作品が面白いと思っていて、こういう人たちと同じ世界に居たいという気持ちからです。IAMASでは、アクースマティックの制作も続けておりますが、スピーカーの音をアナライズする音楽ではなく、視覚と合わせたマルチメディア作品や現実の空間で奏でられる電子音楽の作曲をしています。

 

■大久保さんの活動のひとつに、アクースモニウムなどによって上演される電子音楽の創作があります。2014年3月に東京で開催された「CCMC2014」では、「雫」という作品が上演されており、5月には「富士電子音響芸術祭2014」に参加されています。そして、10月に奈良の神社で開催された「ひびきののりと」というコンサートでは、「東北地方太平洋沖地震のための三重点」という作品が初演されています。大久保さんの創作におけるフィクスト・メディア作品の位置づけについて、そして、「雫」や「東北地方太平洋沖地震のための三重点」といった作品についてお話しいただけますか。

フィクスト・メディアのメリットとして、人間ができない音楽表現ができるということがあると思います。例えば、1,000 BPMで一拍ずつバスドラムを打って、8小節後に裏拍にハイハットを打つことは、人間にとっては困難ですが、コンピュータで打ち込めば簡単にできます。これによって、物理的制約によるリミッターが外れ、より知的好奇心によって構成ができるようになったと思います。

一方デメリットとしては、何でも出来てしまうことです。8分音符で1,024周期のループされたメロディが鳴らされていて、十二平均律より細かいピッチでマッピングされていても、知覚を超えてしまいランダムにしか聞こえません。このようなメリット/デメリットを意識しながら、鑑賞者の知覚を置いていかないような作品を制作しています。

「雫」は、電子音の基本的な波形であるサイン波のみを使用した作品です。現在は豊かな音色を合成できる市販のソフトウェアが多く登場し、簡単に面白い音が作れるようになりました。アクースマティックのコンサートを聞いていると、この音楽が面白いのは、作曲者の能力ではなく、作曲者が使っているソフトウェアを作った人の能力ではないかと思うようなことが増えてきました。自分自身への戒めもあり、単純な電子音であるサイン波に音量を描き、雫が水面に落ちた時のような音のみで制作しました。
https://soundcloud.com/motokiohkubo/shizuku

「東北地方太平洋沖地震のための三重点」では、東北地方太平洋沖地震の波形を使っています。2011年に僕は地元仙台で被災しました。当時はシンガーソングライターをやっている人が街中で人々を勇気づけているのを見て、現代音楽を作って誰も共感させることのできない自分は何やっているのだろうと悔しい思いをしていました。「ひびきののりと」のテーマが「この世界から消えた音」だったので、震災をテーマにした作品を創ることにしました。

地震の波形をオーディフィケーションしているのですが、解像度の荒い低音しかならないのでピッチを上げています。物理現象だからか、波が打つ音のように生の音のように聞こえるのが面白かったです。タイトルの「三重点」は科学用語で固相、液相、気相が共存する状態のことを言い、地震による地面の揺れ、津波、それを音にしたことによる空気の揺れを表しています。
http://hirvi.bandcamp.com/track/triple-point-for-2011-t-hoku-earthquake

 

■大久保さんは海外のフェスティバルにもたびたび入選されています。2014年10月にメキシコで開催された「MUSLAB 2014」や、11月にスウェーデンで開催された「Acousmatic for the People III」などのフェスティバルで上演された作品についてお話しいただけますか。

「MUSLAB 2014」では上記の「雫」が上演されました。MUSLABは多くの作曲家の作品が上演されたようです。作品を気に入って頂けたのか、会期中2回のコンサートで上演して頂きました。

「Acousmatic for the People III」では、「ふすまオーガズム」という作品を上演して頂きました。通常擬人化という行為は、文字や絵で行われますが、音による擬人化ができないかと挑戦した作品です。コンサートでもCDでもネットでも、まず作品を聴く前にタイトルを目にすると思います。そして作品の冒頭でも男女の喘ぎ声が再生されます。このように性的なテーマを念頭に置いた状態で、ふすまの音で作られた性的な行為からなるリズムや音色を聞けば、ふすまがオーガズムに達しているイメージが浮かぶのではないだろうかという挑戦です。
https://soundcloud.com/motokiohkubo/fusumaorgasm

 

■2014年10月には、横浜で開催された「スマートイルミネーション・アワード 2014」に、音と光の作品「そのいし」が入選しています。こうしたサウンド・インスタレーション、あるいは、サウンド・オブジェ的な作品を手掛けられるようになった経緯や、「そのいし」という作品について教えていただけますか。

IAMASに入ってからは、スピーカーから再生された音を鑑賞する形態の作品ではなく、現実世界に音楽を持って行きたいという思いがありました。そして技術的にも電子音の作曲だけでなく、プログラミングや電子工作の知識がやりたいことに追いついたということもあります。

2014年のスマートイルミネーションのテーマが「PRIMARY LIGHTS 語り合う光」でした。そこから原始的(PRIMARY)な素材が光で語り合うような作品を作ろうと思いました。素材として選んだのは、人間が素材として早い段階で使用したであろう黒曜石でした。黒曜石に紫外線で光る蛍光塗料を塗り、8×8で棚に並べ、紫外線LEDを当て光らせています。

光るルールにライフゲームを採用しています。光っている状態が生きている状態、光っていない状態が死んでいる状態として、最初にランダムに状態を生成します。自分が死んでいる場合、周りが3つ生きていれば次に誕生する。自分が生きている場合、周りに2つか3つ生きていれば次も生存する。それ以下やそれ以上だと死んでしまう。というルールで各セルが明滅します。

全体を見るとランダムなようだけれども、意思を持った生命活動のように見えます。そして彼らの活動をソニフィケーションします。横の8をメジャースケール、縦の8をオクターブにマッピングして、生きているセルのみが演奏されます。そうするとメロディと和音の中間のような音響が、毎回違うパターンで鳴り響きます。視覚と聴覚で鑑賞する作品です。

 

■9月に開催される「サラマンカホール電子音響音楽祭」で初演される作品について、現時点での構想を教えていただけますか。

こちらはコンサート「響きあうバロックと現代」で上演されます。アクースモニウムや電子音楽など、テクノロジーを使用した音楽で、サラマンカホールのパイプオルガンの使用が可能という条件でした。

パイプオルガンは鍵盤で音程が奏でられるだけでなく、左右にあるストップをオン/オフすることで倍音を追加することができます。それは電子音楽で言えば加算合成にあたります。既にパイプオルガンだけで電子音楽のような表現が出来るのに、更に電子音を加える必要は無いと思い、パイプオルガンの演奏のみの作品にしました。

演奏はコンピュータを使うものではありませんが、人間がコンピュータのようにルールの下で演奏/操作するものになる予定です。現在はオルガンの音色をコンピュータ上でシミュレートして、最適なルールを探しています。

 

■8月中旬にカナダで開催される「ISEA2015」にも大久保さんはご参加されるようです。こちらで上演される作品についてもお話しいただけますか。

ISEA2015のメインテーマは「Disruption(崩壊)」で、いくつかあるサブテーマの中から「Glitch」を選びました。グリッチとは、意図しないエラーやノイズを指します。CDの音飛びや映像の受信不良などの状態のことです。

音でのグリッチは、クリックやハムノイズ等色々あるのですが、僕はMP3圧縮によるグリッチに着目しました。データサイズを減らす目的でMP3圧縮をかけると、意図しないノイズが音源に乗ってしまいます。まずこれをグリッチとしました。そして、グリッチは通常、グリッチしていない状態としている状態、つまりオン/オフの関係しかありません。しかし音は時間軸を使えば、通常の状態からグリッチの状態までモーフィングすることでオン/オフの間を聴くことができます。

この作品はアルヴィン・ルシエの「I am sitting in a room」を参考にして「I am sitting in a .mp3」というタイトルにしました。ルシエの作品は録音した声を部屋で再生し、その音を録音し…を繰り返すと部屋が持つ周波数特性が残るという作品です。この作品では「私はMP3の中で座っています」という声の音源をMP3圧縮し、更にMP3圧縮し…を何度も繰り返しながらビットレートを下げていき、最終的にはリズムと音色が崩壊したノイズ音になります。

 

■今後の活動のご予定などお話しいただけますか。

7月31日に岐阜県大垣市のスイトピアセンター・コスモドームでプラネタライブ「ゆらぎ、ささやき」があります。こちらは映像作家のScott Allenと共に電子音響音楽と自作投映装置のパフォーマンスライブを行います。

8月14~18日にはカナダのバンクーバーでInternational Symposium on Electric Arts(ISEA)、9月11日から13日に岐阜県岐阜市で行われるサラマンカホール電子音響音楽祭に出品します。皆さま是非お越しください。

 

■これからのますますのご活躍を期待しております。どうもありがとうございました!

ここまでお読み頂きありがとうございました!

 

 

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