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10月 21

JSEM電子音楽カレンダー/今月のピックアップ特別篇「電子音楽なう! vol. 4 in 名古屋」 その1

JSEM電子音楽カレンダーでは、担当の川崎弘二が、カレンダーに掲載されている各種イベントを「今月のピックアップ」として月イチでご紹介しております。

2014年11月に開催されるイベントにつきましては京都芸術センターで開催されるコンサー ト安野太郎のゾンビ音楽『死の舞踏』」をすでにピックアップいたしましたが、日本電子音楽協会の主催により11月22日に開催されるコンサート「電子音楽なう! vol. 4 in 名古屋」 も特別篇として取り上げたいと思います。

その1として、このコンサートにご出演される渡辺愛さん、吉原太郎さん、福島諭さんに、今回のコンサートについてのお話しを電子メールでお伺いしました。

 

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電子音楽なう! vol.4 in 名古屋
2014年11月22日(土) 開場:18:30 開演:19:00
会場:KD Japón
料金:¥2,000(+1 Drink Order)
出演:水野みか子、大谷安宏、吉原太郎、石上和也、Mimiz(鈴木悦久、飛谷謙介、福島諭)、渡辺愛、佐藤亜矢子
主催:日本電子音楽協会
協力:富士電子音響芸術祭、KD Japón

 

 

渡辺 愛さんインタビュー

 

■日本電子音楽協会との関わりについて教えていただけますか。

日本電子音楽協会(JSEM)には2011年の末に入会しました。入会してすぐの2011年12月25日にJSEMコンサート「たいせつな人と聴く電子音響音楽」へ出演する機会を得、ピアノと電子音響の混合(ミクスト)作品を榑谷静香さんのピアノで発表しました。

その後2013年3月にはJSEM創立20周年記念事業として「騒音芸術百年」というコンサートを企画しました。ルイージ・ルッソロの「騒音芸術宣言」から丁度百年というメモリアルイヤーにかこつけた構成でした。またJSEMの後援事業としては吉原太郎会員の主宰する「富士電子音響芸術祭」をはじめ、「U::Gen」「CCMC」にも度々出演しています。

 

■今回の「電子音楽なう!」で演奏される作品の内容や、上演の形態について、現時点でのご予定などお話しいただけますか。

今回は先立って11月9日に東京で行われる「町井亜衣フルートリサイタル」で委嘱を受けているフルート独奏のための新作「十年の旅 Voyage à travers la décennie」をソースに、電子音響にアレンジした作品を発表する予定です。フルートとの混合作品ではなく、メディアに固定した形態をとります。

十年というのは町井さんのフルーティストデビュー十周年に対するオマージュなのですが、2004年は私が初めてアクースマティック音楽を学ぶためにフランスに渡って本格的に作品制作をした年なので、電子音響音楽の自分史としても節目の十年だと考えています。

 

■「電子音楽なう!」は広い意味での電子音楽の「現在」を提示するイベントなのではないかと思います。ご自身の作品における「現在」の要素について教えていただけますでしょうか。

私の作品は録音技術を用いた音楽です。ジャンルやスタイルとしての現在性は特にないと思いますが、録音された音楽を扱うことを今改めてシビアに問い直したいと切実に思っています。

素材の言表するもの、作者・受け手との関係など…録音は現実を具体的に捉えることができ、即時にパッケージすることができるように勘違いしてしまいますが、言うまでもなく“現実のほうがより現実的”なのであり、その記録を聴き直した刹那、即時は“かつて即時だったもの”として腐敗します。

今聴こえている物音すべてを録音物に替えて生きていくことはできません。そう考えるととても不思議な気持ちがしますし、録音された音というのはあらゆる音の中でも特殊なものだと思います。録音の問題、それは私にとって極めて今日的で現在の問題です。

 

■聴衆のみなさまに向けて、一言お願いいたします!

いままでのコンサートの経験から申し上げると、電子音楽に馴染みのないお客様ほど「おもしろかった!」「発見があった!」と興奮してお帰りになられます。「なう」は通常のコンサートより気軽な雰囲気だと思いますので、気後れしないで是非聴きにきてください。お待ちしています。

 

 

吉原太郎さんインタビュー

 

■日本電子音楽協会との関わりについて教えていただけますか。

1999年に豊住竜志先生のご紹介で学生会員として入会致しました。以後、定期演奏会、名古屋市科学館プラネタリウムでの公演などいくつかのコンサートに出演させて頂く機会を頂き現在に至っております。

 

■今回の「電子音楽なう!」で演奏される作品の内容や、上演の形態について、現時点でのご予定などお話しいただけますか。

今回上演する作品は「Aperture」というタイトルの電子音響音楽作品となります。2013年10月にパリで開催されたIna-GRM主催ACOUSMAに出演する機会を頂き、このコンサートのために制作したものです。

廃村や繁華街の路地裏、人々、あるいは社会から見放されたような場所を訪ね、フィールドレコーディングした音素材からかつてそこにあったであろう風景を創造しようとしたものです。今回は2ch版をアクースモニウムで上演する予定です。

 

■「電子音楽なう!」は広い意味での電子音楽の「現在」を提示するイベントなのではないかと思います。ご自身の作品における「現在」の要素について教えていただけますでしょうか。

近年、技術の進歩によって高解像度でのプロジェクションが以前に比べて安定した環境でできるようになりました。

フィールドレコーディングにおいてもデジタルカメラで風景を手軽に撮影するような感覚でレコーダーを使用することができるようになり、私自身もこれらの恩恵を受けながら現在までに多くの音素材の収録を行ってきましたし、機材の小型化によって以前は行くのに躊躇するような場所へも積極的に行くことができるようになりました。

今現在も録り溜めた素材ライブラリーは増えつつありますが、音素材の高解像度収録だけではなく、完成された作品を空間に放った時に感触として感じられるような音響空間の構築を目指しています。

 

■聴衆のみなさまに向けて、一言お願いいたします!

今回の会場は2階席もあるコンパクトな空間と伺っており、私自身も昔20人で満席になってしまうような小さなスペースに沢山スピーカーを配置してライブをしていたのでお客様が物理的精神的にも近い状態で聴いて下さることに今から大変楽しみにしております。

 

 

福島 諭さんインタビュー

 

■日本電子音楽協会との関わりについて教えていただけますか。

入会は2006年になります。その年の秋に行われた第13回定期演奏会に足を運びました。「マルチチャンネル再生の可能性を探る」と題されたもので、客席側にも設置された複数のスピーカとホールの残響とが興味深い効果を上げていたのを記憶しています。

その後は協会の関係する演奏会に自作を発表させてもらったりしています。毎回、充実した環境で自分なりの課題に挑戦させてもらえるためありがたく感じています。

私が普段は新潟在住ということもあり、2013年2月には新潟の砂丘館で「電子音楽なう!vol. 2」を開催しました。今後もこうした表現を紹介できる機会を増やしていきたいと考えています。

 

■今回の「電子音楽なう!」で演奏される作品の内容や、上演の形態について、現時点でのご予定などお話しいただけますか。

私はMimizというユニットで参加致します。Mimiz(鈴木悦久、飛谷謙介、福島諭)は毎回、決められた楽譜のようなものは用いず、即興的に演奏を行います。2人(鈴木、飛谷)の演奏者がそれぞれに持ち寄った楽器や、ミキサー内部の発振によるハウリング音などを駆使して音を出し、それをPCのオーディオ・インターフェイスに入力します。PCの内部に入力された音の情報は、ここでデジタル処理され様々な加工が行われながら会場のスピーカから出力されます。私はこのPC内部のプログラミングと操作を担当しています。

Mimizの場合、PCの処理のための約束事として「あらかじめ録音したものを演奏中に使用しない」というものがあります。出てくる音は全て2人が演奏時に出した音をリアルタイムにサンプリングして使用することにしています。そうすることによって毎回の曲想はダイナミックに変わります。それにより演奏に向き合う集中力の質を高められるのではないかとも考えています。

 

■「電子音楽なう!」は広い意味での電子音楽の「現在」を提示するイベントなのではないかと思います。ご自身の作品における「現在」の要素について教えていただけますでしょうか。

よくメンバー3人で話をするのですが、Mimizのこうした演奏スタイルは2008年にひとつの頂点に達していました(※1)。その後もさらにその先を目指してもいましたが、メンバーの鈴木さんがドイツに生活の拠点を移した時期や、私の個人作品の作曲上の興味の変化などからMimizの活動としては数年間のブランクを経験しました。

しかし今年、2014年は3人で演奏できる機会も増え、また次の頂点に向かえるよう試行錯誤している段階です。今回は会場に設置された多くのスピーカを使用してPCからは6chに別れた音を展開する予定です。当然、チャンネル数が多くなれば制御するパラメータも増えるため、演奏時にそれらをどれだけ効率的に処理できるかというのは挑戦になります。

演奏中のPCの操作は、各パラメータの数値変化を扱っているのがほとんどを占めます。良い集中の中にあるとそのわずかな数値変化によって生じる音の変化が手に取るように把握できるときがあります。演奏時のまさに「現在」に没入し、音による様々な事態に対応していく事のできる集中力を得ることこそが目的です。そうしてようやく音楽と接触できるのだと感じています。

そしてそのような状態を得るためには、(2008年の状態に戻ることはできないのですから、)今の私たちに合ったやり方を見つけ、さらに磨いていくしかないのだろうと考えています。

※1:CD Mimiz「Layered Session」に2008年の2つのセッションが納められている。
http://bookofdays-shop.com/?pid=21529883

 

■聴衆のみなさまに向けて、一言お願いいたします!

良い集中のなかで意義のある演奏が出来るよう備えていきたいと思います。どの瞬間にどのように反応し、結果的にどんな音響にたどり着くのかやってみるまで分からないところもありますが、どこか珍しい場所に向っていけるよう努力していきますので、見届けてもらえれば幸いです。

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