JSEM電子音楽カレンダーでは、担当の川崎弘二が、カレンダーに掲載されている各種イベントを「今月のピックアップ」として月イチでご紹介しております。
2014年11月に開催されるイベントにつきましては、京都芸術センターで開催されるコンサート「安野太郎のゾンビ音楽『死の舞踏』」をすでにピックアップいたしましたが、日本電子音楽協会の主催により11月22日に開催されるコンサート「電子音楽なう! vol. 4 in 名古屋」 も特別篇として取り上げたいと思います。
先日公開いたしましたその1に引き続き、その2として、このコンサートにご出演される石上和也さん、佐藤亜矢子さん、水野みか子さんに、今回のコンサートについてのお話しを電子メールでお伺いしました。
電子音楽なう! vol.4 in 名古屋
2014年11月22日(土) 開場:18:30 開演:19:00
会場:KD Japón
料金:¥2,000(+1 Drink Order)
出演:水野みか子、大谷安宏、吉原太郎、石上和也、Mimiz(鈴木悦久、飛谷謙介、福島諭)、渡辺愛、佐藤亜矢子
主催:日本電子音楽協会
協力:富士電子音響芸術祭、KD Japón
石上和也さんインタビュー
■日本電子音楽協会との関わりについて教えていただけますか。
日本電子音楽協会には、2012年5月に吉原太郎さんと由雄正恒さんのご紹介で入会いたしました。今年の2014年7月には、神戸のCAP CLUB Q2にて「電子音楽なう! vol. 3」を企画いたしました。
また、協会からの後援事業として「Full Space」「ユノ・デラ・イブ」を企画いたしました。
■今回の「電子音楽なう!」で演奏される作品の内容や、上演の形態について、現時点でのご予定などお話しいただけますか。
今回上演する「YAOYOROZU 8ch-ver」は、タイトルに記載どおりの8chマルチの作品です。現時点では、ラップトップコンピュータによる即興+有る程度作りこんだ電子音響パートによるミックスになるかと思いますが、ひょっとすると自作シンセ・システムも使用するかもしれません。
作品のテーマは(こちらもタイトルどおりですが)、2009年頃から一貫したアクースマティック作品のテーマでもある「神仏」です。「八百万の神」に感謝する気持ちで演奏したいと思っております。
■「電子音楽なう!」は広い意味での電子音楽の「現在」を提示するイベントなのではないかと思います。ご自身の作品における「現在」の要素について教えていただけますでしょうか。
現在は、やはり過去があってのことなので、過去に頂いた様々な恩恵を大事にしていきたいと思いながら日々活動するように心がけています。
自分自身の作品への取り組みとしては、非常にありきたりかもしれませんが原点回帰といいましょうか、例えば自分にとってのネイティブ性とは何か、という事を意識するよう心がけています。
■聴衆のみなさまに向けて、一言お願いいたします!
音楽に「電子」という冠が付くことによって、どうしてもマイナスイメージを持ってしまうというご意見を頂くことがありますが、実際に体感されると好反応を頂くこともあります。
「電子」という冠で一括りに捉えられない、様々な音楽家による様々な音楽を、是非お楽しみいただけばと思います。
佐藤亜矢子さんインタビュー
■日本電子音楽協会に入会した経緯や会員歴など、協会との関わりについて教えていただけますか。
2011年末に宮木朝子先生からのご紹介で入会しました。私にとっては丁度、数年の空白期間を経て2度目の修士課程に入学した年=本格的に音楽活動を再始動した年、という区切りの年でした。
協会関連行事としては、2013年3月に開催されたJSEM 20周年記念事業「騒音芸術百年」コンサートにて、映像付きの電子音響音楽作品を発表しました。また、後援イベント「U:Gen」出演や、JSEMに縁のあるJSSA(先端芸術音楽創作学会)にも学生会員として所属し、研究発表を行っています。
■今回の「電子音楽なう!」で演奏される作品の内容や、上演の形態について、現時点でのご予定などをお話しいただけますか。
「騒音芸術百年」で初演した《線の記憶》から継続している線シリーズ第4作です。或る「線」を巡って2年前から毎年、レコーダー片手に旅をしています。旅の道すがら、あるいは辿り着いた先々で録音した音のみを素材にし、線シリーズとして作曲を続けております。
それらは個人的な記憶の回顧録のようなものです。旅先の風景が朧げに見え隠れするような断片を象徴的に挿入し、しかし具体的な行き先を決して聴衆には告げない。他の誰でもない「私の旅」の轍のようなもの。
2chフィックスト・メディアの電子音響音楽作品として、アクースモニウムで上演します。
■「電子音楽なう!」は広い意味での電子音楽の「現在」を提示するイベントなのではないかと思います。ご自身の作品における「現在」の要素について教えていただけますでしょうか。
その時だからこそ描写できる音の模様/造ることの出来る音の建築物として、常に「私」の「現在」を表出しようと試みます。それは上演手段や技術面での斬新さ/現在性を媒介した試みではなく、大小様々な意味での「社会」の反映と、それを咀嚼出来たり出来なかったりする葛藤のプロセスそのものだと感じます。
線シリーズは今回の《線に風窓》含め4曲(+番外編1曲)作曲してきました。線の二人旅は今後も続けますが、その都度「私」は出会う物事に当惑したり歓喜したりしながら、「現在」の自分を削って作品に仕上げていくのだと思います、有能な相棒(レコーダー)と共に。
■聴衆のみなさまに向けて、意気込みなどをひとことお願いいたします!
私はこの「なう」を、現在進行形の電子音楽を「真面目に/気軽に」「味わう/考える」イベントだと位置付けています。活発な議論や疑問がここで生まれれば嬉しいですし、そうして聴衆と音楽家が一緒になってシーンを活性化させて行ければ素晴らしいことだと思います。名古屋で、皆様と全力でぶつかり合えたら光栄です。
水野みか子さん アンケート回答
電子音楽協会には1993年ころから入れていただいて、第3回定期演奏会から参加させていただいております。会員歴20年以上ということになりますが、この20年の間にはいろいろなことがあり、JSEM会員が減少傾向でとても心配したころもありました。さいわい、この数年は、新入会員の方も増えてきており、頼もしい限りです。
「電子音楽なう!」は,元来、若者の催しだと思っていたのですが、鈴木さんからお声かけいただき、恥ずかしながら参加させていただくことにしました。今回の作品「Trace the City」は、私としましては久しぶりの、楽器や声の演奏家がステージに上がらない作品です。私自身がMacBookを触って演奏(?)するものです。
いちおう「演奏」なので、本番前には「稽古」をするのですが、システムを組み上げて動作性をチェックしたり改変したりしていると、「稽古」のタイミングがどんどん短くなってしまいがちですので、自分でタイムリミットを決めて、「稽古」の時間を確保するよう努めました。
ステージ上の演奏家とコラボするときも同じなのですが、リアルタイムでシステムを動かす作品では、作曲過程は「楽器製作」のような過程でもあり、いかにして効率よく演奏意図を出せるか、がシステム練り上げることにつながると思います。もちろん今回は、演奏家がいませんので、「楽器」も簡易なものではありますが。
今回の作品「Trace the City」には、俳優で劇作家のモリリンタロウさんが登場なさいますが、本番では彼は会場におられません。2015年夏の予定で名古屋市政70周年を祝うコンサートを企画しているので、そのとりにはリンタロウさんにご出演いただくといいなあ、と考えています。もちろんそのためにシステムを作り直すわけですが。
この作品では,視覚的要素に連動する形で音が生み出される部分があり、会場には「スコア」を投影します。視覚と音楽要素との関わりについてこれまでもいろいろ試してきましたが、今回のような連続変化のものについては初めてです。音声ファイルはProTools 11で構築するのですが、ProToolsは10あたりから(と思いましたが)、格段に操作性があがり、音声処理の頑健さがすごいです。ライヴ演奏では今回はProTools 11そのものはつかいませんが、音の遠近、移動、周波数操作などなど、表現したいことをサクサク試してみることができるのがとてもありがたいです。
ハポンは,小さいですがとても雰囲気のよいハウスです。この特別な空間での特別な音楽をお楽しみください。よろしくお願いいたします。