JSEM電子音楽カレンダーでは、担当の川崎弘二がカレンダーに掲載されている各種イベントをご紹介していきたいと考えております。
2014年10月に開催されるイベントから、今回は金沢の鈴木大拙館で開催されるコンサート「エレクトロニクス即興演奏 島田英明 × ASUNA」をピックアップいたします。
このコンサートにご出演される島田英明さんに、今回のコンサートについてのお話しを電子メールでお伺いしました。
■コンサートを告知するウェブサイトでは、島田さんによる「電子変調されたヴァイオリン」と、ASUNAさんによる「リード・オルガン」による即興演奏が行われるようです。ASUNAさんとご共演されることになった経緯についてお話しいただけますか。
今回の演奏は、金沢市の公益法人が企画するイベント・シリーズ「ナイトミュージアム」の一環として決まったものです。私が時々企画する地元でのライブを、現在は金沢市に在住する作曲家の田中吉史さんが見に来ていただいていて、彼のお話づてに、今回の演奏のお話が持ち上がったようです。企画サイドからは、「他アーティストとのコラボレーションをお願いします」との事でしたので、近年、地元でのライブでご一緒しているASUNAさんをお誘いした次第です。
■今回のコンサートにおいて、島田さんはどのようにエレクトロニクスをお使いになるのか、もし、ご予定のことがございましたらお話しいただけますか。
私のヴァイオリン演奏は、リングモジュレーターを通してアンプ・スピーカーから増幅されます。初期の頃から使っていたハンドメイドのリングモジュレーターは、数年前に壊れてしまい、今はMoogerFoogerのリングモジュレーターを使っています。ヴァイオリンの音声入力を電圧エンベロープに変換させるMS-03という機材に通し、リングモジュレーターのもう一方の入力のオシレーターにテンションをあたえて、サウンドを変形させる事が出来ます。
今までのAgencement名義のライブは、ほぼこれでやってきました。今回の演奏でもそれは変わりませんが、ASUNAさんの通奏されるオルガンの響きに電子変調ヴァイオリンがどのように乗って行くのか、私自身楽しみにしています。
■80年代半ばから「Agencement(アジャンスマン)」という名義でテープ音楽も発表してきておられます。テープ音楽の制作と、電子変調したヴァイオリンによる即興演奏にはどのようなアプローチの違いがあるとお考えでしょうか。
私は1979年頃からヴァイオリンの即興演奏のような事をやり始めています。前年のデレク・ベイリーの初来日時の後、レコードなどを介して、ベイリーの一音一音が妙に切り離されたギター演奏を聴いてからの事でした。
後にノイズミュージックとも出会っていますが、それでも「楽器を演奏する」という所から離れなかったのは、その最初の影響が今も有効だからだとも言えます。そして80年代半ばからのAgencement、この言葉は当時まだ翻訳されていませんでしたが、偶然に見つけて直感的に使用したのを憶えています。アプローチの違いについては、後述します。
■島田さんは金沢を拠点の一つとして活動しておられます。金沢という場所はご自身の音楽に影響を及ぼしているとお感じでしょうか。
私の「テープ音楽」は、その本質から外れて、大体において素材には私のヴァイオリン演奏の録音のみを使用してきました。1985年当時、最初のレコードを作ろうとした時も、未編集の即興演奏と、それを使ったマルチトラック・テープを並立させるというアイデアが最初からありました。金沢にいて、どのようなシーンに属す事も出来ない状況のなかで、まずレコードを作るという事がありました。
アナログテープを使わない現在においても、マルチトラックによる作品の制作をスタジオで継続しています。一方ライブでは、主にリングモジュレーターを使用したヴァイオリン演奏になります。マルチトラックの重層的な要素は少なく、電子変調されていても楽器演奏の線的な推移である事に変わりはありません。近年は、即興音楽の演奏者とのライブ共演も多数あり、アコースティックでの演奏も多くなりました。
■ライブ活動やCDリリースなど、近年の島田さんは活動が活発になっているように思われます。活動ペースの変化には何らかの契機がございましたでしょうか。
ライブに限って言えば、2009年に金沢21世紀美術館にて、作曲家の一柳慧氏監修のイベントに招かれた頃から、ライブの自主企画もするようになりました。リリースはまだ増えていませんが、現在まで寡作で来てしまった今、創作に集中したいというのはあります。
■今後のご予定などがございましたら、ご紹介いただけますでしょうか。
11月初旬には2日連続で、東京・八丁堀の七針、同じく水道橋のFtarriにてライブ演奏をします。詳細は各ウェブサイトをご覧下さい。現在、ヴァイオリンを素材としない電子音のみによる作品を制作しています。本名名義での公開を目指しています。
■コンサートのご成功をお祈りしております。どうもありがとうございました!
◎コンサートのご案内
日 程:2014年10月10日(金) 18:30開場 19:00開演
場 所:鈴木大拙館、金沢
定 員:40名(要予約 7/1(火)から予約受付)
参加費:500円
申込先:金沢芸術創造財団 Tel: 076-223-9898
http://www.nightkanazawa.com/event/event_57.html
◎CDのご案内
秋山徹次, 広瀬淳二, 池上秀夫, 石川高, 木下和重, 古池寿浩, 河野円, Maresuke, 松本健一, 島田英明, 鈴木學, 高岡大祐 / Septet//2013
Agencement / Viosphere+ selected works 1984-1991