*.JSEM – 2018JSEM特別コンサート(20180811)

*.JSEM(読み方:アステリスク・ドット・ジェーエスイーエム)は、日本電子音楽協会主催の特別演奏会です。ライブエレクトロニクス、オーディオビジュアル、電子音響音楽、ラップトップミュージックなどのコンピュータを使用した音楽が演奏されます。日々進化し続けるテクノロジーと音楽を融合させ、新しい音楽の創作を試みる作曲家たちが仙台に集結。

*.JSEM専用HP

2018.8.11 |土|
18:00開演 (17:30開場)
入場無料 FREE
会場

エル・パーク仙台 スタジオホール

助成

公益財団法人 仙台市市民文化事業団

後援

先端芸術音楽創作学会

 

 

出品者:
・水沼慎一郎(ゲスト)
・高野大夢
・林恭平
・桃井聖司
・門脇治
・大久保雅基

【主催・問い合わせ先】
日本電子音楽協会(担当:門脇、大久保)
http://jsem.sakura.ne.jp/
info-jsem[a]jsem.sakura.ne.jp  ※[a]は@

【出品者プロフィール】
水沼 慎一郎:
新潟大学、スコラ・カントルム(パリ) 卒業 「一条工務店」「トヨタ」CM音楽制作 「Skyscape for 6 sensors + loudspeakers(仙台マチナカアート2012)」 「Toccata for piano(CCMC2018入選)」 ピアノソロアルバム「ふわり」が坂本龍一氏に好評を得る。作曲を門脇治、鈴木雅光、清水研作、ナルシス・ボネ、パトリス・ショルティーノの各氏に師事。

高野大夢:
電子音響音楽を中心に、時間・空間・テクノロジーおよびそれらの認知に対する思考をベースとした創作研究を行う。自作品の発表・上演のほか、電子音響音楽作品の上演における音響システムのエンジニア/インタープリターとしても活動し、多くの作品上演に携わる。賞歴にCCMC入選(2007、2011)、第2回東京国際歌曲作曲コンクール入選(2011)、ICMC入選(2017)など。日本電子音楽協会会員。

林恭平:
1984年福井県で生まれる。2012年、大阪芸術大学大学院作曲コース修了。七ツ矢博資、上原和夫、宇都宮泰、檜垣智也、各氏に師事する。電子音、具体音によって表現した、文学性に富んだ電子音響作品は、国内外で多数、入賞、入選を果たし高い評価を得ている。また、音楽制作だけでは無く、絵画、映像制作も同時に行っている。2016年度、2017年度、 Russolo (フランス)にて最終審査員の一人に任命される。

桃井 聖司:
愛知県岡崎市出身。東京都練馬区在住。愛知県立芸術大学で作曲を専攻。作曲を兼田敏、和声・対位法を平田裕一、松井昭彦、岡坂慶紀の各氏に師事。「ヘラクレスの栄光Ⅲ・Ⅳ」「メテオス」「大乱闘スマッシュブラザーズX」などのゲーム音楽を初め、映画、ミュージカルの音楽を多数制作。日本電子音楽協会の公演で「Motet XX」「飛龍天翔」「空の呼吸」「…楽園の愉悦」などの電子音楽作品を発表。今回は「電力芸術演奏会2013」以来5年ぶりの出品。

門脇 治:
1964年塩竃市生まれ。宮城教育大学および同大学院にて作曲を故本間雅夫、吉川和夫の両氏に師事。ジャンルにとらわれない活動を続けている。平成10年度宮城県芸術選奨新人賞、平成15年度文化庁舞台芸術創作奨励賞入選。日本電子音楽協会、日本現代音楽協会、日本作曲家協議会、宮城県芸術協会会員。

大久保雅基:
1988 年仙台市生まれ。アコースティック楽器や演奏行為にテクノロジーを組み込み、生演奏にデジタルの所作を融合させた作品を制作している。洗足学園音楽大学 音楽・音響デザインコースを成績優秀者として卒業。情報科学芸術大学院大学[IAMAS] メディア表現研究科 修士課程修了。名古屋芸術大学デザイン領域、愛知淑徳大学人間情報学部非常勤講師。日本電子音楽協会、先端芸術音楽創作学会会員。

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オンラインで聴ける日本電子音楽協会会員有志による作品集のページを公開

オンラインで聴ける日本電子音楽協会会員有志による作品集のページを公開しました。JSEMのHP内メニューの[ONLIN LINSTENING]-[JSEM Microcosm]からアクセスください。

直リンク

 

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JSEM第21回定期演奏会-キーワード「詠像詩」

「詠像詩」

今や巷に音楽は溢れかえっています。映像や、詩も同様に人の手によって人のために作られ続けています。ネットワークが求める作品形式のフォーマットにさえ準じていれば、誰でも手軽にそれらを「公開」できるようにもなりました。もはやそれらこそが日常的な意味での「音楽」や「詩」や「映像」を形作ってるかのようでもあります。
しかし、こうした時代にもう一度あらためて音楽、詩、映像の持つ芸術的な特性を見つめ直すことはできないでしょうか。ネットワークや記録メディアを介した情報の伝達の速度は速く、それらは一瞬で私たちを”分かったような感覚”にさせますが、一方でそうしたフォーマットからこぼれ落ちている表現をいっそう見えにくくしているのかもしれません。
音楽とは何でしょうか。詩とは、映像とは何でしょうか。
私たちは日常でそれらに多く触れていますし、朧気にその役割をイメージすることもできます。しかし、それらは既に分かりきったものなのでしょうか。SNSなどのソーシャルメディアの登場で、新たに気づかされた感覚があるとすれば、人にとって「現在」を感じるという行為は極めて重要な要素の1つでありそうだ、ということかもしれません。そして人には、そのための識別感覚はかなり鋭く備わっているのではないか、ということも様々な局面で実感されています。
今回、JSEM定期演奏会で掲げられているテーマは「詠像詩」です。「像(image,statue,figure,portrait…)」と「詩(詩情/poetic)」というキーワードを含んだ造語ですが、「詠(歌う、唱える)」はまさに作品がその場で生成される様を含んでいます。音楽や、映像や、詩が本来我々にとって何ものであるのか。どうあり得る(あり得た)のか。記録メディアのフォーマットを前提とせず、そこからこぼれ落ちるものにも目を向け、舞台上で生成される「現在性」に立ち会うこと。もはやそこに約束された確かな道はないのだとしても、「詠像詩」をテーマに集まった新作達と共に、JSEMはこの難題を見つめ直したいと思います。

第21回日本電子音楽協会定期演奏会 「詠像詩」

日時:2018年3月6日(火)19時開演

場所:浦安音楽ホール ハーモニーホール(JR京葉線・武蔵野線 新浦安駅南口から徒歩1分)

出品者:大久保雅基、佐藤亜矢子、土屋雄、仲井朋子、林恭平、渡辺愛

入場料:2,500円

 

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第21回日本電子音楽協会定期演奏会「詠像詩」 (20180306)

JSEM主催公演のお知らせです

第21回日本電子音楽協会定期演奏会 「詠像詩」

日時:2018年3月6日(火)19時開演

場所:浦安音楽ホール ハーモニーホール(JR京葉線・武蔵野線 新浦安駅南口から徒歩1分)

出品者:大久保雅基、佐藤亜矢子、土屋雄、仲井朋子、林恭平、渡辺愛

入場料:2,500円

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2017 JSEM特別コンサート(20170907)

Welcome EMS2017Nagoya !

電子音響音楽国際研究大会Electroacoustic Music Studies 2017ウエルカムJSEM特別コンサート

JSEMは、電子音響音楽国際研究大会(EMS2017)への参加者を歓迎するため、研究大会会場にてコンサートを開きます。1時間程度の短いコンサートですが、EMSに参加する50名あまりの海外の作曲家や研究者との交流の場でもありますので、ぜひお出かけください。
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日時 :9月7日(木) , 19:00-
場所 : 名古屋市立大学芸術工学部 大講義室 (名古屋市千種区北千種210)

JSEM特別コンサート

Yoshihisa SUZUKI / 鈴木 悦久      GRAIN(2017)

Ai WATANABE / 渡辺 愛         esquisse 2017

Alexander SIGMAN / アレックス・ シグマン  detritus II

Kyohei HAYASHI / 林 恭平          Sunflower

Asako MIYAKI / 宮木 朝子        Hidden Garden

Video: Fusako BABA / 馬場 ふさこ

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このコンサートは入場無料です。

9月5日(火)には沼野雄司氏による基調講演が行われます。9月6日(水)には先端芸術音楽創作学会JSSAによるウェルカム・コンサートが実施されます。いずれも入場無料です。

EMSの詳細は http://www.ems-network.org/ems17/index.html をご参照ください。

お問い合わせ先:mikakom@sda.nagoya-cu.ac.jp 水野

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“音響の最前線、日本とドイツより” JSEM第20回記念演奏会(20161216)

JSEM主催公演のお知らせです

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音響の最前線、日本とドイツより

Akustischen Grenzen aus Japan und Deutschland

日本電子音楽協会 第20回記念演奏会

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1992年に設立された日本電子音楽協会は、今年で24年目を迎えます。日本電子音楽協会は、コンサートやシンポジウム、時には海外との交流事業を通して日本におけるこの分野のアクティビティーを牽引し、またその時々のテクノロジーや、美学的、思想的な課題に取り組んできました。これまで連綿と続けられてきた定期演奏会は、今回で20回目となります。この節目にシュトックハウゼンなどの電子音楽のパイオニアを生みだしたドイツから、ルドガー・ブリュンマー氏の作品を迎え、ヨーロッパでの最前線をお伝えします。

プログラム

大谷安宏:《Reverie #4》for solo Electric Guitar and programming (2016 初演)

門脇治:《失われた声を求めて À la recherche de la voix perdu》管楽器とコンピュータのための *(2016 初演)

仲井朋子:《雨の輪郭》ピアノとコンピュータのための ** (2016 初演)

林恭平:電子音響映画《Lemon Candy(Moon Down Action)》(2016)  音楽・映像 林恭平

水野みか子:《Lipochrome》ピアノとエレクトロニクスのための*** (2016 改訂初演)

宮木朝子:《Landscape_Montage_Technique[f_visual]》for video acousmatic (2016 初演) 映像 馬場ふさこ

由雄正恒:《盗まれた時間》クラリネットとコンピュータのための **** (2016 初演)

 

【演奏者】アルトサクソフォン:門脇治 * ピアノ:八島伸晃 ** ピアノ:坂口仁菜 *** クラリネット:満江菜穂子 ****

〈ゲストコンポーザー〉

ルドガー・ブリュンマー(ZKM音楽音響研究センター ディレクター)

《deconstructing double district》for 8-channel audio and video * (2011)

《Spin》for 8-channel audio and video ** (2014)

ビデオ: フォルカー・クッヘルマイスター * ビデオ: ベルント・リンターマン **

日時:2016年12月16日(金)18:00開演 (17:30 開場)

会場:ドイツ文化会館 OAGホール http://www.oag.jp/jp/kontakt/

入場料:【当日】3,000円 【前売】2,500円【学生】1,500円 *全席自由

※前売はこちらのフォームからお申込みください。http://www.goo.gl/hkZbD6

企画構成:古川聖 仲井朋子

音響:中原楽(ルフトツーク)

主催:日本電子音楽協会

後援:先端芸術音楽創作学会

お問合せ:info-jsem@jsem.sakura.ne.jp (日本電子音楽協会事務局)

 

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JSEM 電子音楽カレンダー/2016 年 6 月のピックアップ

 

 

JSEM 電子音楽カレンダーでは、担当の川崎弘二が、カレンダーに掲載されている各種イベントを「今月のピックアップ」として 2014 年 8 月より月イチでご紹介し、2周年を迎える 2016 年 7月に掲載した沼野雄司さんへのインタビューにて最終回を迎えました。

掲載が遅れてしまいましたが、2016 年 6 月に開催されたイベントから、6 月 5 日から 19 日にかけて、ニューヨークで開催された「 New York City Electroacoustic Music Festival 」をピックアップいたします。こちらのイベントにて作品を発表される渡邊裕美さんに電子メールでお話しをお伺いしました。

なお、JSEM 電子音楽カレンダー・今月のピックアップは、今回にて最後の更新となります。若い世代の作家、海外で活躍する作家、地方を拠点に活躍する作家、の方々にお話しをお伺いするというテーマを中心として、2年間で延べ 40 人の方々に、現在の電子音楽をめぐる状況をさまざまな角度からお話しいただきました。どうもありがとうございました。これまで今月のピックアップをご覧いただきましたみなさま、インタビューにご協力くださいましたみなさま、そして、三輪眞弘会長をはじめとする日本電子音楽協会のみなさまに心から感謝申し上げます。

 

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New York City Electroacoustic Music Festival
2016/06/05-07 New York Philharmonic’s biennial at National Sawdust
2016/06/13-19 Abrons Arts Center

Concert 11
2016/06/13(Playhouse)
Judith Shatin / Plain Song
Roberto Zanata / Basia
Georg Hajdu / Just Her – Jester – Gesture
Galen Brown / God is a Killer
Hunter Long / the universe is no narrow thing
Takashi Miyamoto / Garan for Piano and Computer
Nobuaki Yashima / Homage to Fantasy
Hiromi Watanabe / Anamnèse
Jelena Dabic / silk_road_reloaded
Madelyn Byrne / Northern Flight
Haerim Seok / Through the Contrabass
Dana Naphtali / Audio Chandelier

http://nycemf.org/2016-festival/

 

 

渡邊裕美さんのプロフィールには「東京藝術大学音楽学修士課程終了後、渡仏。電子音響音楽の制作を始める。電子音響音楽をレジス・ルヌアール・ラリヴィエール(エリック・サティ音楽院)、並びにクリスティーヌ・グルト(パンタン音楽院)、コンピュータ音楽をオクタビオ・ロペス(ジョルジュ・ビゼー音楽院)、並びにロラン・ポティエ(サン=テティエンヌ大学)に師事。2012 年、パンタン音楽院にて審査員満場一致の最優秀でディプロム(DEM)を取得、および SACEM より奨学金を授与される。2013 年にはサン=テティエンヌ大学にてコンピュータ音楽プログラマー職業修士課程を修了」とあります。フランスに行かれた経緯や、フランスで受けられた電子音楽についての教育などについてお話しいただけますか。

日本ではもともと音楽学の学生で、東京芸大の楽理科にてスペクトル音楽の研究をしていました。特に興味があったのが G. グリゼーの音楽時間についての言説で、音響心理学や情報理論などを参照しながら音楽における時間のあり方について思索し独自の作曲エクリチュールを生み出しているのが面白いと思いました。

また、電子音響音楽についても、仏語の授業で M. シオンの著作が扱われていたり、また楽理科の先輩方が企画した輪読会で P. シェフェールの著作を読んだりと、フランス電子音響音楽の思想的な側面に触れ合う機会にも恵まれていました。そういうわけで、修士過程を終了した後はフランスに留学して電子音響音楽の今を見てみたいと漠然と考えていました。

渡仏して当初は電子音楽音楽のクラスの発表会をいくつか聴き、パリ7区の音楽院で電子音響音楽を教えていたレジス先生に頼み込んで生徒にしてもらいました。アルス・エレクトロニカ賞を取られているレジス先生ですが、かなりストイックでかつミニマリスムな手法でアクスマ作品を制作されています。

授業では Ina-GRM のスタジオで録音した音素材を聴きこんで整理・分類し、モノの表象や印象から切り離された音そのもののジェストやキャラクターを再発見することに年の殆どを費やしました。いわゆるこの「還元的聴取」で音を捉えることは今でも電子音響音楽作品制作の上で役立っています。

後に移ったパンタン音楽院C. グルト先生のクラスでは8ch アクスマ曲の制作を行いました。ここでは電子音響音楽における空間の概念を一新することが出来ました。

これらの電子音響音楽だけでなく、コンピュータ音楽を学ぶことも留学の目的であったので、平行して Ircam の週末講座に参加して Max/MSPOpenMusicAudioSculpt などのソフトウェアを習得したり、またパリ 20 区の音楽院O. ロペス先生のサウンドシンセシスの授業に出ていたりしました。

2012 年にはきちんとコンピュータ音楽のディプロムを取ろうと思いたちサン=テティエンヌ大学で当時できたてのコンピュータ音楽の職業修士課程に登録しました。ここでは Max/MSP を用いたサウンドシンセシスのみでなく、C言語や Lisp、デジタル音響処理に特化したプログラム言語である Faust、また録音編集の授業や音響学など多岐に渡っていました。

現在はパリ第8大学の音楽学修士課程に所属しながら空間投影の手法についての研究を進めています。ここでは作曲の講座があり、そこが運営している CICM という研究所では HOA Library という Ambisonic による空間処理のためのツールが開発されています。

 

■渡邊さんの SoundCloud では、2009 年の作品「 Volatilisation 」から 2014 年の作品「 Fission 」までの、フィクスト・メディアのための作品を試聴することができます。2014 年に日本で開催されたアクースモニウムによるコンサートのプログラムには、渡邊さんの作品は「アクスマティックな語法から出発し、さまざまな物質にまつわる固有の音楽的な身振りを作品に取り入れ」ていると記されています。フィクスト・メディアのための作品の特徴のひとつとして、この「物質にまつわる音楽的な身振り」が挙げられるのではないかと思います。ご自身のフィクスト・メディアのための作品の変遷について、また、ご自身のいくつかの代表作についてご紹介していただけますか。

先ほどのレジス先生のクラスで最初に制作した作品が Volatilisation です。重力とその反動をテーマにした作品で、ピアノ内部の弦上でピンポン球や小さな鉄球を弾ませて素材録りしました。

このリバウンドの反復するリズムを楽曲の構成要素に発展させたのが次に制作した Réminiscens です。この作品はガラスが砕かれて散る音のみで作られていますが、音素材にディレイやリバーブといった加工がかなり施されており、音像が多重になっていきやがてひとつのマス・ソノールになる過程を聞き取ることができるようになっています。この歪みながら反復され変質していく音と、それが静寂のなかからいつのまにか浮き出て沈んでいくさまが、タイトルの「曖昧な記憶」、「前世の記憶」という意味とリンクしています。

また物質の身振りと聞き手の関係性に焦点をあてた作品として、水にまつわるシリーズがあります。例えば La chimère au bord du fleuve ではセーヌ川上流での滝の音や、ルーアン港の船の音、ル・アーブル海岸でのカモメの鳴き声など水場にまつわる音風景をフィールドレコーディングしたもから作品が構成されています。

このシリーズでは、水そのものの音というよりは、むしろ水を想起させるようなサウンド、または水を取り巻く生活音などを用いて作曲されており、文明社会の中に置かれた水環境のありかたがもう一つのテーマとなっています。

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Ina-GRM 主催 Banc d’essai 2013 にて

 

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Ina-GRM 主催 Banc d’assai 2013 にて(渡邊、C. Zanési、R. Renouard Larivière、C. Groult)

 

■ 2015 年から今年にかけては、バス・クラリネット、ヴァイオリン、ハープ、パーカッションと電子音響のための「 L’eau bleue qui étincelle au jaune soleil 」、フルートと電子音響のための「 Anamnèse 」、ギターと電子音響のための「 Le crépuscule du soir 」と、器楽と電子音響のための作品を多く手掛けられています。このように創作の幅が広がった理由についてお話しいただけますか。また、これらの作品の制作環境や、具体的な上演の技術などについても教えていただけますか。

もともとフィクストメディアの作品ではミニマルな素材から無限に音を引き出す仕組みを考えていたので、「じゃあ、それが生の楽器の音だったらどうなのだろう?」という問いから器楽と電子音響のための作品を作るようになりました。生楽器の音の豊かさに匹敵するような電子音響を生み出し競合させたいという欲望もありました。

器楽と電子音響のための作品では、どれも様々なディレイが施されて楽器の音が多層化されています。例えば Anamnèse ではまず録音パートで GRM-Tools の Fusion を用いた8層のフィルター&ディレイ処理されたフルートの音が生の楽器の音に随伴します。またリアルタイムパートでは生の楽器音が Ircam の SuperVP によって移調され、さらに Grame の Faust で書かれたプログラムによって残響音が拡張されていきます。これらの電子音響は8ch のスピーカーシステムによって空間投影されるのですが、バラ曲線や代数螺旋などを描く三角関数によって音像移動の軌跡がコントロールされています。

 

pict_3Le crépuscule du soir の Max コンサートパッチ


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Le crépuscule du soir の 空間投影のためのプログラム

 

■「 New York City Electroacoustic Music Festival 」では「 Anamnèse 」が上演されるようです。アメリカに行かれるのは初めてとのことですが、これまでヨーロッパのさまざまなフェスティバルにご参加されてきたことと思われます。ヨーロッパにおける電子音楽のフェスティバルの現状について、お分かりになる範囲でわれわれにご紹介いただけますでしょうか。

電子音楽をどのように規定するかでだいぶ状況が変わると思いますが、例えばアクスマだとフランス・クレで行われているフチュラ音楽祭、ベルギー・ブリュッセルで行われているエスパス・デュ・ソン音楽祭などは比較的規模の大きいものだと思います。

また Ina-GRM 主催のプレザンス・エレクトロニックですが、近頃はパリの新しいアートセンターであるサン・キャトルに開催場所を移して行われています。このフェスティバルではアクスマにかぎらず、電子音楽やエレクトロニカ、ノイズ、即興パフォーマンスなどを含めた幅広いフェスティバルとなっています。例えば 2016 年のプログラムですと、B. フェレイラのアクスマ曲と並んで、Editions Mego 主宰のピーター・レイバーグのライブ・パフォーマンスが行われました。あとはストラスブールで行われている Festival Exhibitronic やノルマンディー地方で行われている Plage sonore などでもアクスマ作品が上演されています。

またオーディオ・ヴィジュアルのフェスティバルになると、例えばパリにて隔年で行われている Festival Némo やナントの Scopitone などが規模の大きいものとなっています。

フランスのここ最近の傾向ですが、残念なことに政府の助成金削減の方針により、徐々に大きなフェスティバルが減りつつあります。例えばブールジュの電子音楽コンクールは世界的に有名でしたが、助成金打ち切りで無くなってしまいました。

pict_5NYCEMF音楽祭 エイブロンズ・アーツ・センター

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NYCEMF音楽祭 プレイハウス・ホール

 

■昨年は RIM(Réalisateur en Informatique Musicale)として、ブーレーズの「二重の影の対話」を上演されておられます。電子音楽の上演のためにいくつかのプログラムも制作しておられるようですが、電子音楽の再生・上演・演奏などについて、フランスにおける流行や、最新の技術などについて、もしご存知のことがあれば日本の聴衆に教えていただけますか。

電子音響音楽の上演ですが、映像や光の演出をつけたり、またコンテンポラリーダンスや舞踏などとアクスマ楽曲をミックスしたりするなど、音楽が主体ながらも視覚的な要素との連動を狙うプロジェクトが増えている気がします。

また、楽器の胴体にピエゾセンサーとサウンドエキサイタをつけたスマート楽器(ハイブリッド楽器)のためのミクスト曲も少しずつながらレパートリーが増えています。これは Ircam が主導で進めているプロジェクトで、楽器の生の音をコンピュータやエフェクターを用いてリアルタイムで加工し、楽器そのものをスピーカーの替わりに振動させることで、スピーカー無しに、主体的にコントロールされた新しい音色を楽器から聴かせるものです。

 

■今後の活動のご予定についてお話しいただけますか。

直近ですと、9月に ICMC ユトレヒト大会でフルートと電子音響のための Anamnèse が再演される予定です。また 11 月にはスペインでハイブリッドチェロのための新作が、来年5月にはソプラノと電子音響、映像つきの新作がストラスブールで初演される予定です。

 

■ますますのご活躍を期待しております。この度はどうもありがとうございました!

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JSEM 電子音楽カレンダー/2016 年 7 月のピックアップ 2

 

 

JSEM 電子音楽カレンダーでは、担当の川崎弘二が、カレンダーに掲載されている各種イベントを「今月のピックアップ」として 2014 年 8 月より月イチでご紹介し、2周年を迎える 2016 年 7月に掲載した沼野雄司さんへのインタビューにて最終回を迎えました。(なお、遅れてはおりますが 2016 年 6 月のイベント紹介の掲載も予定しています)

そして、2016 年 5 月に掲載した委細昌嗣さんへのインタビューにおいて「自薦、他薦を問わず、インタビューなどのご希望がございましたら、川崎までお知らせください!」と募集をしたところ、大塚勇樹さんが Molecule Plane という名義により 7 月 10 日にリリースされる CD「Acousticophilia」についての紹介記事をお送りくださいました。

 

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Molecule Plane “Acousticophilia”
Japan / CD / 299 MUSIC / NIKU-9002 / 2016.07.10

1. Jaguarundi (2016)
2. Bringer (2014)
3. Stain (2015)
4. Vixen (2016)
5. Ghost Dubbing (2014)
6. Maeve (reprise) (2014)
7. Arcane (2015)
8. Woundwort (2016)
9. Gush (2012)

http://www.rec-lab.com/#!niku-9002/jkkp8

 

 

皆さんこんにちは、大塚です。三回目の登場となりますが、この電子音楽カレンダーが惜しくも終了してしまうということで、最後に「今度リリースするアルバムの話をさせてもらえませんか?」と川崎さんにお願いし、今回の機会を頂いた次第です。しばらくの間、おつきあいくださいませ。

 

ということで早速本題に移りますが、7/10 (日) に電子音楽のアルバムをリリースします。現在、Amazon、楽天、Yahoo! ショッピングなどのオンライン通販や、タワーレコードHMV などの大手 CD ショップでご予約頂けるほか、私個人の WEB ショップ「V.V.A.V.」でもご購入頂けます。Amazon プライム会員の方や各ショップのポイントカードをお持ちの方はそれぞれのお店で、サイン付きで欲しいという方は「V.V.A.V.」で手に取って頂ければと思います。

 

さて、アルバム自体はどんなものかと言いますと、これまでのインタビューでもお話しさせて頂いていた「Molecule Plane」(モレキュル・プレーン=分子鉋)という「音色と音響の可能性の追求」に特化したプロジェクト名義で、タイトルは『Acousticophilia』(アコースティコフィリア)といいます。Molecule Plane というプロジェクトの在り方自体は 2015 年 10 月のピックアップの「CCMC 2015」に関する部分でお話しさせて頂いたことがそれに当たります。

リリースするのは、コジマ録音でエンジニアとしてキャリアを積んだのち独立したという大学時代の友人が立ち上げた「299 MUSIC」(ニクキュー・ミュージック)というレーベルからです。私のリリースはレーベルとしては第二弾なのですが、私の前がピアノによる現代音楽の委嘱作品、私の後がメシアンのピアノ作品集ということで、最初は自分の音楽の方向性とはちょっと違うかなとも思ったのですが、その入り乱れた感じがドイツの ECM レコードみたいで面白いなと思い、またそれぐらいビッグになってほしいという願いも込めて、この度のリリースのオファーを受けました。

とはいうものの、元々は 2014 年に Molecule Plane をスタートした時点からアルバムを作ることは考えていました。つまり、「CCMC 2014」以降にアクースマティックのコンサートなどで発表した作品というのは、実は一貫して Molecule Plane の理念の下で作られたものであり、いずれアルバムという形でコンパイルされることをあらかじめ想定した上で制作されています。なので、リリースのオファーはまさには渡りに船だったと言えるのですが。

そうして 2014 年に制作をスタートし、このアルバムは断続的ではありながらも2年掛かりで作られたということになりますが、もちろん制作時期がそれぞれ異なるため、アルバムの曲が全て出揃った時点で全体の流れに沿うように全てアレンジやミックスをやり直しました。それに伴いタイトルを変更した曲も一部あります。

 

Molecule Plane として制作した音楽というのは、構造的には極めて単純であると言えます。レコーダーを用いて得られた環境音や何台ものアナログ・シンセサイザーの音を 10 分、20 分、1時間とひたすら長回しで録ったもの(それもマイキングやツマミのセッティングを追い込んでフィックスしたままで)をコンピュータに取り込み、Cycling ’74 MaxNative Instruments Reaktor、その他 DAW 上のプラグインやオーディオ編集で更にエディットします。

そうして徹底的に作り込んだ膨大な量の持続的な音色をレイヤーし、それによって生じる響きから更に新たな音色や音響をコンピュータ上で生成し、また重ね……といったことを繰り返し、そしてそれらの音色が音楽の中で持続からの切断/置換される瞬間の気持ち良さ、繊細なノイズによるサウンドスケープの美しさ……というようなもので成立しています。

加えて、音で何かのテーマを表現した、何かをモチーフに作り込んだということは一切なく、そういった要素は削ぎ落とし、あくまで「モノ」としてのマテリアルが持つテクスチャーやディテールへのフェティシズムが根底にあります。

また、そのように音をレイヤーするという意味においては電子音のクラスターによるドローンやアンビエントであるともいえるのかも知れませんが、では何故そこまでたくさんの音をレイヤーするのかという点についてもお話しします。

エンヤというヴォーカリストは皆さんご存知かと思いますが、彼女の作品ではダビングしたヴォーカルのトラックを 150 〜 200 も並べるそうです。数十トラック重ねた段階で一度位相が悪くなり音のヌケがどんどん悪くなるものの、100 トラックを超えた辺りから再び音がヌケてきて、最終的にあの独特の分厚く幽玄な雰囲気の質感を持った声になるそうです。

その発想の着眼点を面白いと思った時に、「じゃあ自分ではどうするか?」と考えた場合、Molecule Plane では「音を重ねていって位相が狂い出した瞬間」の音のマジックに賭けることにしました。

位相がおかしくなるというのは商業音楽の世界では概ね NG で、その為に低域の処理などに細心の注意が払われています。ですが、そこのコントロール次第では、例えば「低域だけ耳元で鳴っているように聴こえる」とか、「特定の音色だけスピーカーに張り付いたように鳴っている」とか、「スピーカーの外側から音が聴こえる」といった極端な音像の作り方が可能であること、位相のズレを逆に利用し、スピーカーで聴いた時にリスナーが頭の角度や向きを少し変えるだけで音が万華鏡の様に移ろい、特定の音色や帯域がその瞬間耳に飛び込んでくるというギミックを積極的に音楽の中に取り込めること(これも通常のオーディオの世界では絶対に NG です)に気付き、積極的に表現に取り込むことにしました。

このことによって、音色がただのシンセサイザーとそれを加工しただけの音ではなくなり、音響がただのリバーブやディレイによる残響の付加といっただけの枠組みからの脱却が可能となり、そして既存の大半の電子音楽、正しいオーディオの理論からの逸脱という試みに結びついたのではないかと思います。

また、音色そのものもリバーブのかかったアトモスフィアーなシンセパッドをコードでフワーッと鳴らしたようなものではなく、むしろ非常に主張の強い尖った音色ばかりです。だからといってハーシュノイズがグシャーッと鳴っているような一辺倒な音楽でもありませんが。故に普通のドローンやアンビエントとは違い、何かのシーンのバックグラウンドに馴染むものでも、ましてゆったりと癒されるといったようなことも考えていません(リスナーがどう捉えるかは別ですが)。

海外のシーンにもこのような音楽はありますが、どちらかというとモジュラーシンセサイザーやサンプラーなどで一発録りをしたようなものも多く、恐らくここまで膨大に音色をレイヤーして作り込んでいるものは他にないと思います。

と、同時に「癒し」というのは時に物凄くヴァイオレンスなものではないかという個人的な考えもあり、聴くと必ずどれかの音色に耳を奪われ続けるし、またそうであってほしいという聴覚への支配的な振る舞いや挑発をリスナーに対して試みる音楽に仕上げたつもりです。

 

そして前回前々回のインタビューと今回のお話で何となくお分かり頂けたかと思いますが、Molecule Plane のアティチュードとして、そこで作られる音楽とは厳格なエクリチュールあるいはテクノロジー、音響技術のためのものではなく、基本的に「反抗」と「逸脱」のためのものです。その点において、まさに「ドローン・パンク」「アンビエント・パンク」と呼べる音楽が作れたのではないかという自負だけはあります。

ここにあるのは、メロディーやリズムもなく、物語性、ナラティブなものといった要素も排除され、あるのは持続的な音色のカタマリとそれらが切断された欠片だけで、音色そのものにのみ快感原則を見出だし、音楽として射出成形したというものです。

しかし、そういった異質な響きを以てでも強引にでも何かと対峙しようとする、ストラグルしようとする「意志の音楽」でもあると私は思っています。それが最近話題の「音楽に政治を持ち込むな」という話と関係あるかと言われると私にも分かりませんが、敢えて言うなら私自身の生き方とか在り方に関わってくる話だと思います。と同時に、聴いてくださった方の人生のどこかの瞬間で、何かを鼓舞したり駆り立ててくれたり、もしくは今までに聴いたことのない未知の音響体験として作用するような、そんな一枚になれば幸いです。

 

最後に、今回のアルバムを制作する上で参考にしたり影響を受けたりしたアーティストのアルバムもいくつか紹介させて頂きます。それらと一緒に、私のアルバムの試聴用クロスフェード音源も載せておきます。これらの音楽と共に私のアルバムも手に取って楽しんで頂ければ嬉しく思います。

なお、8月に大阪にある environment 0g というクラブでアルバムのリリースイベントの開催を予定しておりますので、詳細が決まり次第お知らせいたします。そちらへも是非遊びに来て頂けたらと思います。

 

……当初考えていたよりも随分長文となってしまいました。最後までお読み頂きありがとうございました。

 

Thomas Ankersmit
live at Audiograft 2013

Figueroa Terrace – Figueroa Terrace
Figueroa Terrace

 

Carl Michael von Hausswolff
Squared – Circulating over Square Waters (ZKM Kubus)
Squared

 

Bruce Gilbert and BAW
Diluvial – The Void
Diluvial (feat. Bruce Gilbert, A David Crawforth & Naomi Siderfin)

 

i8u
Surface Tension – Water 72.86
Surface Tension

 

Tim Hecker
Love Streams – Castrati Stack
Love Streams

 

Kevin Parks / Vanessa Rossetto
Severe Liberties – Seeing as Little as Possible
Severe Liberties

 

shotahirama
Stiff Kittens – One Girl Cookies
Stiff Kittens

 

BOOM BOOM SATELLITES
EMBRACE – NINE
EMBRACE

 

SHINE LIKE A BILLION SUNS – A HUNDRED SUNS
SHINE LIKE A BILLION SUNS

 

LAY YOUR HANDS ON ME – LAY YOUR HANDS ON ME
LAY YOUR HANDS ON ME

 

Molecule Plane
Acousticophilia (XFD)
Jacket

 

 

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JSEM 電子音楽カレンダー/2016 年 7 月のピックアップ

 

 

JSEM 電子音楽カレンダーでは、担当の川崎弘二が、カレンダーに掲載されている各種イベントを「今月のピックアップ」として 2014 年 8 月より月イチでご紹介して参りましたが、2周年を迎える今回にて最終回となります。ただ、2016 年 6 月のイベント紹介と、7 月の新譜ディスク紹介がまだ残っておりますので、実際の最終回はしばらく後になります。

2016 年 7 月に開催されるイベントから、7 月 14 日に北とぴあ つつじホールにて開催される「東京現音計画 #07 クリティックズセレクション1:沼野雄司」をピックアップいたします。こちらのコンサートのプログラム監修を担当された沼野雄司さんに電子メールでお話しをお伺いしました。

 

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東京現音計画 #07 クリティックズセレクション1:沼野雄司
日 時:2016 年 7 月 14 日(木)19:00 開演(18:30 開場)
会 場:北とぴあ つつじホール(東京都北区王子 1-11-1)
入場料:前売 3,000 円、大学生・専門学校生 1,000 円、当日 各種一律 3,500 円、高校生以下無料
http://tokyogenonproject.net/?p=381

スティーヴ・ライヒ / 振り子の音楽(1968)
パオロ・カスタルディ / エリーザ(1964/67)
ハヤ・チェルノヴィン / 十字路(1995)
クリスチャン・ウォルフ / エクササイズ5(1973-74)
ホラチウ・ラドゥレスク / オリジン(1997)
ヨアキム・サンドグレン / 押収品(2011-12)
スヴェトラーナ・ラヴロヴァ / 重力(2013)
ルイ・アンドリーセン / ワーカーズ・ユニオン(1975)
演 奏:東京現音計画
客 演:宮村和宏、大田智美

 

新たな抵抗に向けて 東京現音計画 #07 関連トーク
出 演:沼野雄司(音楽学、桐朋学園大学教授)、東京現音計画メンバー
ゲスト:毛利嘉孝(社会学・文化研究、東京藝術大学教授)
日 時:2016 年 7 月 9 日(土)14:00 開演(13:30 開場)
会 場:Tokyo Concerts Lab.(東京都新宿区西早稲田 2-3-18)
入場料:1,000 円
https://www.facebook.com/events/542210725969209/

 

 

■沼野さんはこれまでにどのようなコンサートのプログラムを手がけてこられましたでしょうか。また、今回、沼野さんが東京現音計画のコンサートのプログラム監修をご担当されるようになった経緯についてお話しいただけますか。

学生時代に仲間とやっていたサークル活動みたいなものを除けば、プログラムを一人で組んだのは、今年の2月にニューヨークで行われた「ミュージック・フロム・ジャパン」の演奏会(日本人作曲家特集)のみだと思います。ただ、それ以前にオペラシティ「コンポージアム」やサントリーホールの「サマー・フェスティバル」の企画にはずいぶんと長く関わっていたので、共同でということであればだいぶ経験はあります。で、今回の経緯といっても、単に有馬さんから電話が来たということです(笑)。かなり責任が生じるので躊躇もありましたが、自分にとってもよい機会だと思ってお引き受けしました。

 

■今回のコンサートのチラシにおいて、沼野さんは「現代音楽とは、何らかの抵抗の謂いである。/このテーゼが間違っていないならば、それはすなわち最広義においての政治運動に他ならない。かつて『政治と音楽』は大きな主題として我々の前に横たわっていた。政治的なテーマによる作品が多く書かれたというだけではない。重要なのは、社会との関係を検討する中で、あるいは社会とのさまざまな摩擦を経験する中で、音楽という行為の根源を問うような作品が次々に産みだされた点にある」と述べられています。1965 年生まれの沼野さんが、今回のプログラムで「政治と音楽」をテーマに選ばれた理由や、その背景などについてお話しいただけますか。

チラシの文章でも触れていることですが、「政治」というのは狭義のそれ──例えば自民党か共産党か、みたいな──だけではなく、まさに最広義での「政治」という意味です。つまり自分と他者が社会の中でどう関わるのか、という問題。いわゆる「現代音楽」は現在も盛んに書かれているし、その技術はずいぶんと洗練されてきていると思うのですが、僕らの人生を変えるような一撃というのにはなかなか出会えない。もちろん、これは単に自分が歳をとったせいでもあるだろうし、ごく単純に聴いている絶対量が少ないせいでもあるでしょう。

ただ、こう言ってしまうとバカみたいな表現なのですが、僕としてはなんでもいいから、なにがしかの知的な刺激がほしいのです。たとえそれがネガティブなものであってもいい。音楽としてはくだらなくても一向にかまわないので、ともかくそれを媒介にして、自分の組成みたいなものが変わるという体験がしたい。音楽による試みが、自身と世界の関係を更新するようなあり方を求めているということです。これは端的にいって「政治」の問題ではないかと考え、キーワードに据えました。

 

■上記した引用文の中にある「音楽という行為の根源を問うような作品」として、スティーヴ・ライヒ「振り子の音楽」(1968)、パオロ・カスタルディ「エリーザ」(1964/67)、クリスチャン・ウォルフ「エクササイズ5」(1973-4)、ルイ・アンドリーセン「ワーカーズ・ユニオン」(1975)が「かつての『政治の時代』を象徴する 1968 年前後に書かれた問題作」としてセレクトされています。これらの作品において、どのようなかたちで「音楽という行為の根源」が問われているのか、沼野さんのご見解をお聞かせいただけますか。

これらの作品の共通点は、とにかくシンプルかつ単純であることです。誰でも聴けば分かるように、狙いがはっきりしている。作品としての「完成度」とか「エクリチュール」みたいなものは、僕にとっては二の次です。もちろんそれらを無視することはできませんが、選ばれた書法が「ごく単純な狙い」に徹底的に、しもべのように奉仕するというのが好ましいあり方です。これらの作品はそれを達成しているのではないかと考えました。音楽という行為の根源、という表現を別の言い方にすると「ある意味では、あまりに単純な仕掛けの作品」ということにもなります。単純な仕掛けだから、仕掛け自体がよくなければ終わりだし、どうしたって仕掛けの限界も見えてくることでしょう。でも、それが選曲の狙いなんです。

 

■さらに、沼野さんは「その後の創作界の『沈滞』の一因は、音楽が政治性を喪失した点にも求められるのではなかろうか。あれから世界の見取り図は大きく変化したけれども、ようやく新しい政治の時代が到来している感触がある。それは単なる右・左といった枠組みを越えた、重層的な抵抗運動を形成するだろう」と述べておられます。言語化するのは難しいかもしれませんが、現在、沼野さんはどのような「新しい政治の時代が到来している『感触』」をお持ちなのか、お話しいただけませんでしょうか。

ここら辺のくだりはちょっとばかり、単なる「文章芸」みたいなところがありますね。こういうところをきちんと突いてくるあたりが川崎さんだ……(笑)。ただ、抽象的で漠然とした感触に過ぎないとはいえ、こういうことを感じているのは本当です。ドイツやフランス風ではなく、しかしドメスティックともいえない作品がどんどん増えている。東京でしかやっていなくても「ドメスティックではない」という印象が大事だと思います。

 

■ 90 年代以降に作曲された作品として、ハヤ・チェルノヴィン「十字路」(1995)、ホラチウ・ラドゥレスク「オリジン」(1997)、ヨアキム・サンドグレン「押収品」(2011-2012)、スヴェトラーナ・ラヴロヴァ「重力」(2013)がプログラムされており、サンドグレンとラヴロヴァの作品にはエレクトロニクスが含まれています。これは東京現音計画の編成といった要因もあるものと思われますが、「きわめてラディカル=根源的な響きの作品」をピックアップするにあたり、エレクトロニクスの要素は意識されましたでしょうか。また、これらの3つの作品を選ばれた根拠や基準など、プログラミングにおいてはご苦労されたものと思われますが、その経緯についてお話しいただけますか。

特にエレクトロニクスの要素を意識したということはなく、また実際、これらの作品におけるエレクトロニクスの用法は特に新しい類のものではないと思います。また、ラドゥレスクはともかく、まだあまり日本では紹介されていない作曲家を選ぶにあたっては、海外に住んでいる友人・知人にも情報をもらいながら(また、作曲家の連絡先などに関しても、いろいろな人にお世話になりました)、少しずつ先のようなタイプの、すなわちシンプルな音楽を書く作曲家を探していきました。さらに、ある程度は意識的に、地域的に「周縁」の作曲家を選びました。

また、当然ながら大前提としては、「東京現音計画」の異様な楽器編成と合致しなければいけない。これは本当に大変で、途中で絶望的な気分になりました。実はチェルノヴィン作品は、もとはコントラバスが入っている編成です。どうしてもやりたいので、コントラバスのパートをチューバで演奏することはできないかと作曲者にコンタクトしたら、「クレージーなアイディアだが、チューバ奏者が優秀ならば試してみてもいい」と答えが返ってきた。そこで、これ幸いと橋本さんのサンプル音源を送ったら「素晴らしい奏者!ぜひこれで行きましょう」と OK が出たのです。ごく小さいことですが、こうした交渉のあれこれも、今回の「政治」の試みの範疇だと考えています。

 

■沼野さんは日本電子音楽協会の特別会員というお立場ですが、今後の日本電子音楽協会について、そして、広い意味での電子音楽の未来について、どのような展望をお持ちでいらっしゃいますでしょうか。

あまりに難しい問いで……ともかく「電子音楽」という括りはどんどん無効化してゆくと思っています。そもそも、いわゆる伝統的なクラシック音楽に関しても PA を入れてしまえばよいと僕は考えているので、その意味ではエレクトロニクスの重要性が減じることはないでしょう。大丈夫です。安泰です。

 

■コンサートのご成功をお祈りしております。この度はどうもありがとうございました!

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JSEM 電子音楽カレンダー/2016 年 4 月のピックアップ

 

 

JSEM 電子音楽カレンダーでは、担当の川崎弘二が、カレンダーに掲載されている各種イベントを「今月のピックアップ」として月イチでご紹介しております。

担当の川崎の怠慢で掲載が遅くなってしまいましたが、2016 年 4 月 1 日に配信を開始した、国立音楽大学コンピュータ音楽研究室で制作された電子音響音楽を収録したコンピレーション・アルバム「 audiblescape 」をピックアップいたします。このアルバムの編纂・マスタリング・アートワークを担当された今井慎太郎さんに電子メールでお話しをお伺いしました。

 

audiblescape

 

V. A. / audiblescape

halfpi records 2016年04月01日 配信開始

http://halfpi-records.com/index_j.html

 

 

 

■今井さんは 2015 年 3 月に、halfpi records というレーベルからご自身の CD「動きの形象」をリリースされています。この CD には、1998 年の作品「共鳴するクォーク」から 2014 年の「あは 笙とエレクトロニクスのための」に至る今井さんの創作の軌跡が収められています。ライナーノートには「本アルバムに収録された作品群は概して、あらゆる自然音に含まれるノイズの微細な運動を方向づけることに関わっています」と述べておられます。この「ノイズの繊細な運動の方向付け」というコンセプトに至られた経緯や、作曲における具体的なその実践の方法などについてお話しいただけますか。

大学生のころ、コンピュータを用いた様々な音合成や音声信号処理を学ぶなか、特にグラニュラー・サンプリングへ傾倒しました。サンプリング(録音)された波形の一部分を 50 ミリ秒程度のごく短い時間ごと再生し、それを無数に重ね合わせることで複雑な肌理を持つ音響を生成することのできる技術です。

これを応用すれば、音高を保ちつつ時間を伸縮して波形を再生する、タイム・ストレッチを実現できます。様々な自然音をストレッチしてみると、通常は認識できない一瞬のうちにも実に複雑で豊かな変化が顕れます。とりわけ、微細で非定常的な「ノイズ」を拡大することで生じる音響に魅了されました。

たった数秒の波形を用い、タイム・ストレッチやグラニュラーの様々なパラメータをアルゴリズム制御し、緊張や弛緩といった音楽的なマクロの律動を獲得する方法を試行錯誤して完成させたのが、「共鳴するクォーク」です。ここで「ノイズの繊細な運動の方向付け」というコンセプトの端緒を獲得します。

その後、ヨーロッパでの活動を通して、西欧音楽における作曲作品の本質はイデアであり、現実に生じる音響はその似像であること、またそれを支えているのが、抽象化された単位としての音である音符や記譜法であることを、強く意識しました。これで、音そのものに淫する自分の指向も明確になりました。

音楽の萌芽は、ノイズの微細な運動として、あらゆる自然音の内にすでにある、という立場を僕はとります。ここでの作曲者の役割は、単位からの構築ではなく、音を見立て、そこに含まれる興味深い運動に誇張や隠ぺいといった変形を施し、始まりと終りのある音楽作品として方向づけてゆくということです。

 

■ 2000 年には、国立音楽大学音楽デザイン学科の制作によるコンピレーション CD「 9111281730 」が制作され、今井さんの 1998 年の作品「 Resonant Waves 」が収録されています。この CD のライナーノートには「1991 年 11 月 28 日、NeXT コンピュータと IRCAM シグナル・プロセッシング・ワークステーション( ISPW )が国立音楽大学音楽デザイン学科の主催する『 Try_Out コンサート』で日本デビューを果たしました。(略)しかし、21 世紀を迎えようとする現在、NeXT コンピュータと ISPW はその役目を終えようとしています。ここに NeXT コンピュータと ISPW へのメモリアルとして、音楽デザイン学科でつくられたコンピュータ音楽作品を収録し、さらに『 NeXT Step 』へと踏み出します」と述べられています。現在、今井さんは国立音楽大学で教鞭を執られておりますが、今井さんが関わられた範囲での、国立音楽大学における 2000 年代以降の「 NeXT Step 」についてお話しいただけますか。

西欧「現代音楽」の文脈や IRCAM からの大きな影響下にあった 90 年代から、マルチ・チャンネル、オーディオビジュアル、パフォーマンス、センサー・デバイス、モバイル・アプリなど、コンピュータを軸にしつつも表現の領域を拡大していったのが、国立音楽大学における 2000 年以降です。

また、イデア —— 似像モデルの音楽において楽器演奏家が担保していた実際の音響クオリティが、「コンピュータ音楽」においては見過ごされがちであるという反省から、録音や編集、ミックス、マスタリング、PA といった音響エンジニアリングも、すべての学生が修得できるように強化しています。

 

■今回、halfpi records からリリースされたコンピレーション・アルバム「 audiblescape 可聴風景」は、「国立音楽大学コンピュータ音楽研究室 電子音響音楽作品集」という副題が付き、藤城達也さん、福田拓人さん、笠原駿一さん、石川将貴さん、郭 一恵さん、蒋 斯汀さんの作品が収録されています。このようなコンピレーション・アルバムを制作されることになった経緯について、「編纂・マスタリング・アートワーク」について、そして、個々の若手作曲家の方々について、今井さんからひとことコメントをお願いできますでしょうか。

コンピュータ音楽研究室で制作された作品のうち、ライブ作品や映像作品についてはYouTubeのチャンネル(https://www.youtube.com/user/SonologyDept)にてこれまでに多数を公開してきました。しかしながら電子音響音楽作品についてはその機会がなかったため、レーベルの2作目として、ぜひ世に出したいと考えました。

国立音楽大学に勤務を始めて今年度で 10 年目、その間に学生が制作した最良の作品群から、アルバムとしての構成を念頭に編纂しました。B. カッツの提唱する K-20 メータを活用したマスタリングは、広大なダイナミックレンジと芯のあるラウドネスを確保した、電子音響音楽に相応しいものと自負します。

アートワークには、ミクロな肌理からマクロな構造を立ち上げる、本アルバムの作品群に共有の美学を象徴する写真を撮り下ろしました。フォントには敬愛する A. フルティガーの、写真の微細さとのコントラストが映える幾何学的な Avenir を選び、印刷物では難しい領域いっぱいの配置を行いました。

以下、各収録作品についてコメントします。

現在はダンスポップ・マエストロ Tomggg として高名を馳せる藤城達也の「ヌエ」は、フルートのみを音素材としながらも、タイトル通り変幻する妖魔のごとく収縮と飽和を繰り返す、力動的で高密度な作品です。歴史的にも多くみられる鳥の囀りをフルートで模した音楽の、新たな傑作といえます。

オーストリアで作曲家として活躍する福田拓人の「衛星」は、重力や遠心力などの力学がはたらく場で運動するかのような多数の音楽的・音響的レイヤーが、モティーフ間を緩やかに補間してゆくことで総体を形づくります。簡潔な形式に精緻な構造が内包される、非常に完成度の高い作品です。

笠原駿一の「出発」は、長野県茅野市民館で開催されたイベント「 Play with Sound Scape 」をきっかけに生まれた作品。横溢する情緒に鋭利な断面を与える、透徹した編集が冴えわたります。マスタリングで一切 EQ を当てる必要のなかった驚異的な高音質も特筆です。

石川将貴の「ハニカム」は、持続する微弱な細粒音による緊張が瞬時の爆発により開放される、ハイ・コントラストでグラマラスな作品。コンサートでの上演時には、無指向性を含む 10 台以上のスピーカを用いて音の「仮想ハニカム空間」が構築されました。諸種の打楽器が音素材となっています。

2012 年の美術手帖「シブカル杯。」においてグランプリを獲得するなど多才を発揮する郭 一恵の「少年の夢」は、張りつめたガラスの糸へ徐々に角度を変えながら反射する月光のような高音が、聴くものの感覚を研ぎ澄ませてゆきます。アルバム中、最も静かで、最も狂気を孕んだ作品。

国立音楽大学博士課程に在籍しながら今夏からパリの IRCAM で研鑽を積むことになった蒋 斯汀の「地平線」は、異なったスケールで輻湊する時間軸上に、可聴域を上下に超えてなお伸びてゆく、SF 映画のサウンド・エフェクトを想起させる艶やかで多彩な音響が展開されます。

 

■今井さんの、そして、国立音楽大学コンピュータ音楽研究室の、今後のご予定についてお話しいただけますか。

自身の予定としては、まず 10 月末にドイツのマクデブルク市で行われる音楽祭「 SinusTon 」に招聘され、箏とテグム、カヤグム、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、エレクトロニクスのための委嘱作品初演を行います。来年 3 月には、スイスのデュオ UMS ’n JIP のための新作を東京で初演します。

また、halfpi records の3作目として、2011 年にバウハウス・デッサウ財団のバウハウス舞台のために制作した電子音響音楽をリリース予定です。

コンピュータがデバイスから「溶け」だしてわれわれの身辺に浸透してゆくであろう今後、「コンピュータ音楽」も新たな局面を迎えるでしょう。西欧音楽の文脈は一方で引き継ぎつつ、他方では VR や IoT、カーム・テクノロジーといったキーワードを踏まえ、コンピュータ音楽研究室を運営しています。

 

■ますますのご活躍を期待しています。どうもありがとうございました!

 

 

■お知らせ
JSEM 電子音楽カレンダー 今月のピックアップ」は、2016 年 7 月で2周年となります。これを期に「今月のピックアップ」は終了することといたします。あと2ヶ月ほどではございますが、自薦、他薦を問わず、インタビューなどのご希望がございましたら、川崎までお知らせください! どうぞよろしくお願い申し上げます。

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