JSEM電子音楽カレンダーでは、担当の川崎弘二が、カレンダーに掲載されている各種イベントを「今月のピックアップ」として月イチでご紹介しております。
2015年1月に開催されるイベントにつきましては、すでに、杉並公会堂(東京)で開催されるコンサート「東京現音計画 #04 ミュージシャンズセレクション 2: 大石将紀」にて委嘱新作を発表された池田拓実さん、そして、2015年3月まで青森県立美術館で開催されている展覧会「青森EARTH 2014」にご出品された松井茂さんをご紹介いたしました。
さらに、2015年1月のイベントについては、日本電子音楽協会・三輪眞弘会長に、1月25日に両国門天ホール(東京)にて開催されるコンサート「大井浩明 Portraits of Composers #20 細川俊夫/三輪眞弘 ピアノ作品集」のお話し、そして、2014年のさまざまなご活動についてもお伺いいたしました。
大井浩明 Portraits of Composers #20 細川俊夫/三輪眞弘 ピアノ作品集
日程:2015年1月25日(日)17:30開場 18:00開演
場所:両国門天ホール,東京
■三輪さんの2014年のご活動についてお伺いしたいと思います。1月にはNHKのテレビ番組「スコラ坂本龍一 音楽の学校 電子音楽編」にご出演され、同じく1月には「パノラマプロジェクト」にて「みんなが好きな給食のおまんじゅう」が初演され、2月には「ハイブリッド・ミュージック」にて「ひとのきえさり」が日本初演され、3月には「低音デュオ 第6回演奏会」にて「お母さんがねたので」、そして、「ヴォクスマーナ 第30回定期演奏会」にて「火の鎌鼬」が初演されています。8月には「サントリー芸術財団 サマーフェスティバル2014」にて「59049年カウンター」が初演され、10月には音楽監督として参加された「地点/光のない。」が再演され、11月にはサントリー芸術財団による個展「TRANSMUSIC」にて「万葉集の一節を主題とする変奏曲」が初演されています。フォルマント兄弟としても、2月には「MIDIアコーディオンによる合成音声の発話及び歌唱の研究」の総括報告があり、11月の「TRANSMUSIC」では「夢のワルツ」のオーケストラ版が初演されるなど、2014年は三輪さんにとって一つのピークとなる年だったのではないかと思われます。2014年のご自身の創作についてお話しいただけますか。
確かに、昨年がピークでなくてはなりません。時間的にも精神的にもこれ以上は無理です・・
作曲ということに対する考え方や姿勢に変化はありませんが、例えば今まで平行して進めてきた「逆シミュレーション音楽」と「フォルマント兄弟」の活動とを出会わせてみたいと考え、11月の「TRANSMUSIC」のための新作が生まれました。
「万葉集の一節を主題とする変奏曲」、それはつまり「海ゆかば」のことです。作曲に対する姿勢に変化はないと言いましたが、社会の方は大きく変化したと感じています。昨年発表したどの作品でも言えることは「音楽と社会」を考える時、作曲家に何ができるのか?という自問自答が繰り返されたことです。
言うまでもなく今、日本社会で起きている様々な出来事が等しく「意味している」のは、「ぼくらは戦前を迎えた」ということだと感じるからです。そしてそれが(音楽の)美とどんな関係にあるのか。「ドキュメンタリー作曲家」という昔自分で考えた言葉を思い出しながら、ひたすら作曲を続けました。
■2014年の日本電子音楽協会は、7月には神戸で、11月には名古屋で「電子音楽なう!」というコンサートを開催しています。2014年の日本電子音楽協会のアクティビティについて、会長としてどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。
メンバーのみなさんには少し申し訳なく思っています。本来ならぼくがもっとリーダーシップを取って、コンサートだけでなく、いろいろなイベントなどを提案したり、企画したりしても良いはずなのにそれができなかったからです。ただ、そんな中でも会員有志が率先して行動し、関西初である神戸や、名古屋でのコンサートを成功させてくれたことをとても心強く思っています。
また、ぼく自身にとってもそれらは「メディア・アートとしての電子音響音楽」という視点から未来を考える貴重な機会になりました。「なう!」シリーズの身構えない(?)リラックスした発表の場でメンバーがそれぞれ個性溢れる作品を持ち寄り、耳を傾け合うという機会がいかに貴重かというだけでなく、面白いのかを実感しました。
■新作初演が目白押しだった2014年に対し、2015年1月に東京の両国門天ホールにて開催される「大井浩明 Portraits of Composers #20 細川俊夫/三輪眞弘 ピアノ曲集」というコンサートでは、ご自身のピアノ曲が年代的に回顧されるものと思われます。三輪さんは常に未来へと向かって創作を続けてこられたという印象を持っているのですが、このタイミングで過去を振り返ることに対し、何らかの感慨などお持ちでいらっしゃいますでしょうか。
はい。まず最初にお話しなくてはならないこととしてプログラムの変更があります。
企画の趣旨として、ある作曲家が今まで書いたピアノのための全作品を一同に集めて演奏することになっていたのですが、一度はそれを承諾したものの、ぼくは自分の過去の作品を再演することにあまり気が進みませんでした。特に学生時代の作品などは、観客に対して、いつものように「これを聴け!」という気持ち(強気)になれない。
考えあぐねた結果、大井さんから新作委嘱の打診もなくはなかったので、新作を発表することにしました。大井さんに弾いていもらうことが前提なので、書いている自分が怖くなるほど途方もなく難しい作品になりました・・
コンサートに関する最新情報は(何かいろいろな悪意も感じる?)以下を御覧ください。
http://ooipiano.exblog.jp/23320671/
■2015年のご自身のご活動について、また、日本電子音楽協会の将来について、ご予定や抱負などございましたらお話しいただけますか。
先に、メンバーに対して「申し訳ない」と言いましたが、今年は大きなイベントが予定されています。「サラマンカ電子音響音楽祭(仮)」です。岐阜県岐阜市、長良川のほとりにあるクラシック音楽専用、「サラマンカホール」で3日間にわたるイベントを日本電子音楽協会(JSEM)、先端芸術音楽創作学会(JSSA)、情報科学芸術大学院大学(IAMAS)とサラマンカ・ホールが行います。プログラムや内容は現在決定中(?)です。
クラシックのホールで電子音響音楽を中心にコンサートやレクチャー、研究会やワークショップなど盛りだくさんの、日本では珍しく大きなイベントになる予定です。2015年9月11,12,13日です。必ず泊まりこみできてください!
■コンサートや音楽祭のご成功をお祈りしております。どうもありがとうございました!
◎コンサートのご案内
大井浩明 Portraits of Composers #20 細川俊夫/三輪眞弘 ピアノ曲集
日程:2015年1月25日(日)17:30開場 18:00開演
場所:両国門天ホール, 東京
・三輪眞弘 / 3つの小品 (1976, 世界初演)
・細川俊夫 / メロディア II (1977/78)
・三輪眞弘 / レット・イット・ビー アジア旅行 (1990)
・細川俊夫 / 夜の響き (1994/96)
・細川俊夫 / ピエール・ブーレーズのための俳句 (2000/03)
・三輪眞弘 / 虹機械 第2番「七つの照射」(2008)
・細川俊夫 / 舞い (2012)
・細川俊夫 / エチュード集 (2011/13)
・三輪眞弘 / 虹機械 公案 – 001 (2015, 委嘱新作)
大井浩明: ピアノ