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2月 07

JSEM電子音楽カレンダー/2016年2月のピックアップ

 

 

JSEM電子音楽カレンダーでは、担当の川崎弘二が、カレンダーに掲載されている各種イベントを「今月のピックアップ」として月イチでご紹介しております。

2016 年 2 月に開催されるイベントから、1 月から 2 月にかけて NTT インターコミュニケーション・センターにて開催されている「オープン・スペース 2015 情報科学芸術大学院大学[IAMAS] 車輪の再発明プロジェクト #6」をピックアップいたします。こちらのイベントにて作品を発表されている johnsmith さんに電子メールでお話しをお伺いしました。

 

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オープン・スペース 2015 情報科学芸術大学院大学[IAMAS] 車輪の再発明プロジェクト #6

日 程:2016 年 1 月13 日 (水)〜
会 場:NTT インターコミュニケーション・センター(東京)

johnsmith / 超超短距離電信装置 (2016)
johnsmith / Choose one, if you want. (2016)
johnsmith / 運動ーコイルと磁石の場合 (2016)
大島拓郎 / ソノラマ「このはら」(2016)
高見安紗美 / Strip Sound Source Speaker (2016)
上田真平 / 1 / 0 / 1 (2016)
佐藤大海 / ふれる 分離されたピックアップの機構と振り子によるエレキギター (2016)
具志堅裕介 / BODY/SHADOW (2016)

http://www.ntticc.or.jp/Exhibition/2015/Openspace2015/Works/Re_inventing_the_Wheel_j.html

 

■ johnsmith さんは 2013 年から 2015 年にかけて情報科学芸術大学院大学(IAMAS)にて学ばれています。IAMAS へと進まれた経緯や IAMAS でのご研鑽などについてお話しいただけますか。

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IAMAS への入学を志したきっかけは学部時代の恩師の助言です。

元々私は多摩美術大学の久保田晃弘教授と三上晴子教授のもとで学んでいたのですが、学部四年の中盤頃、将来を決めあぐねていた私は一念発起して何としてでも大学生活を延長したい、優雅なるモラトリアムこそ人間を成長させる最も尊きものであろう、と思い大学院への進学を考え始めていました。

しかし、大学というのは閉鎖的な環境なので、あまり他の大学との関わりもないし、この頃のわたしは作品制作以外全くしていないという状況でしたので、他の学生以上にその傾向が強かったんです。関東圏の予備校生が東京藝術大学と五美大(女子美術大学、多摩美術大学、東京造形大学、日本大学藝術学部、武蔵野美術大学)を目指すのと同じように、漠然と芸大かタマビの院が良かろう、と思ったわけですね。ところが、先立つものがない、という現実的な問題に直面するわけです。となると学費が高い私立美大であるタマビはどうやっても志望できないわけです。というわけで藝大を受けるか、しかし藝大は学部時代に 2 次試験の面接で落ちている。講師陣もさして変わっていない訳で、正味な話受かる訳ないだろうと思ってました。

で、そんな時にIAMASの存在を知ったんですね、ドイツ留学の時や様々な進退を決める時に助言をいただいていた三上先生に「マルちゃん(本名由来のあだ名)なら城くんがいいんじゃない?」と言われて、それから現在の主査である城一裕先生について調べてみました。

入学してからは基本的に身体表現を主に研究していたのですが、あるとき三輪眞弘教授の『インターネット・ストリーミングに接続された筋肉刺激装置による「流星礼拝」』というパフォーマンスを見たんですね。それですごい衝撃を受けた。ここで全部やられてるわけです。僕のやりたかったことが、もう、全部。

簡単に説明してしまうと、システム的には電気を筋肉に流して表情を変化させる真鍋大度さんの『electric stimulus to face』と似たようなシステムなのですが、この作品では鈴を持った演者の腕に電極を取り付けて、電気刺激で腕を強制的に運動させて演奏させるんです。ここで舞台に立つ人というのは、全く訓練を受けていない、というかもっと言えば、電気刺激で動く筋肉さえ持っていればいいわけです。演劇やダンスなどで言われる、「特権的肉体」の全く存在しないパフォーマンスなわけです。まさに僕が理想とする舞台表現だったんですね。おそらく後にも先にも僕はあれより素晴らしいパフォーマンスを見ることはないでしょう。というわけで、僕はそれを見て一度パフォーマンスからは離れたものを作ってみるべきだ、と思ったんです。それから城先生のもとで音響学に基づく作品制作を始めました。

 

■2013 年11 月にスロヴェニアにて開催された、MFRU(International Festival of Computer Arts)、同年 12 月の九州大学における「インターカレッジコンピュータ音楽コンサート2013」などで、johnsmith さんはパフォーマンスで参加されています。こうした機会に行われたパフォーマンスについてお話しいただけますか。

寺山修司の詩に「踊りたいけど踊れない」という言葉があります。

学部時代から僕はデジタルデバイスを使った身体表現の研究していました。ダンスなどの専門的な教育を受けていない人間がいかに人前に立つことができるのか、という観点で制作した作品群がこれらのイベントで上演された作品になります。

これらの作品は僕自身の、楽器が演奏できたりダンスができる人に対するルサンチマンの発露で、つまりシャイで人前に立つのが苦手な自分がいかにして彼らより目立つことができるか、という試みだったんですね。まず踊れない人というのはリズムが取れません。楽器ができない人というのは楽譜が読めませんし(一応ちょっとは読めますが)、耳障りのいい音を奏でることができません。そのような障害をいかにして乗り越えることができるかと考えて、コンピュータ技術やセンサー類を使って踊れない理由を一つ一つ潰していく、という工程を経ています。

はじめは YAMAHA の「Miburi」というウェアラブル楽器を参考に、音楽に合わせて体を動かすのでなく、体の動きによって音を生成することで、逆説的にその行為をダンスと言い張れないか、という方向性を模索しました。

2010 年に多摩美術大学内で行った最初の上演はひどいもので、システム的には靴に仕込んだスイッチを踏み込むことでリズムを構成し、指の曲げで音響を作っていく、というものだったのですが、まずリズムを作ることができず、指の曲げだけだと体の動きを規定するものが何もないので、結局このデバイスだけでは踊ることができず、ただ私が赤面するばかりでした。

その後、音響をリズムに依拠しないアンビエントなものに、体に複数のセンサーをつけ体の傾きなどの様々な情報を使って音響を生成するのではなく、身体の動きによって音響を制御する、という構造を持たせました。能動的に踊る、というのは素人には難しいですね、拍子はずれな動きをした時に笑われるのではないか、みたいな恐怖がある。だから構造的に踊るのではなく、踊らされる、踊らざるを得ない、そういう構造を持たせるべきだろう、と。

それでなんとか人前で踊れるようになりました。そうなってくると今度は舞台を演出したくなってくるんですね、でもシャイだから他のスタッフさんにやってもらうのではなく自分一人でなんとかしたい。というわけで山川冬樹さんの電球を使った心音のパフォーマンスと、クワクボリョウタさんの『 10 番目の感傷(点・線・面)』を参考に自分の身体を電球によって壁面に大きく投影する。というアイディアを思いつきました。電球との位置関係で作り出す影は舞台の背面や客席にも届きます。自分の身体によって干渉できる範囲を舞台から客席まで拡大するわけです。

こうやって出来上がったパフォーマンスが『This is not.』です。その後、この作品で用いた電球との位置関係で映像表現のように自分の身体よりも大きなイメージ(視覚情報)を操作できる、という点に興味が移り、電球の発する電磁波を身体をアンテナにして受信し音響を生成する『Electro Voice』を制作しました。その制作の延長で、電気信号を自分の体を通して、舞台上のオーディオ端子に接続されたもう一人の人間に接触することで通電させ、人間を通過した電気によるノイズ音響を作り出すパフォーマンス『彼と彼女の間に流れる電流の相互関係に見る彼と彼女の関係性について』を制作しました。

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現在では自分で演じるのではなく、舞踏譜を記述することで他人に踊ってもらう、という方向にシフトしてきています。これまでの作品では自分が踊れないことをごまかすために要素過多になる傾向が強かったので、演者に伝わるように舞踏譜を記述する過程で本当に見せたいものを絞り込むような制作手法を試みています。

 

■ 2014 年 11 月に洗足学園音楽大学にて開催された「インターカレッジ・ソニック・アーツ・フェスティバル 2014」と、2015 年 2 月に開催された「IAMAS 2015」において、「Toru: モスキート音によって年の功を逆転させるあそび」を発表されています。この作品の詳細は先端芸術音楽創作学会の会報に掲載されていますが、ご自身のパフォーマンスと「Toru」のような作品は、ご自身ではどのような関係にあるとお考えでしょうか。

僕にとってはこれらの作品とパフォーマンス作品に優劣をつけるというような意識はないです。ただ、僕自身、身体表現にしてもなんにしても何かしらの専門家であるというふうには考えていないので、それぞれの分野から得たものを使って、芸術というフィールドで自分の見たいものや体験したいものが作れたら、というのは動機としてあります。

Toru

Toru: モスキート音によって年の功を逆転させるあそび」は元々モスキート音を使えば子供にだけ情報を伝えることができる、という気づきから出発しています。社会的にネガティブなモスキート音の用いられ方を逆転して、従来この超高周波からの攻撃にさらされている子供達にとってポジティブに用いることができるのではないか、というアイディアでした。もともとは子供だけが聞き取ることのできる音の舞踏譜というものを考えていたのですが、優劣がハッキリ出るものの方が良いだろうと思い、遊び、ゲームという形式をとることにしました。

この作品では、言い方は悪いんですが簡単に言ってしまえば、子供に親や周りの大人を明確に見下せる機会を与えたかったんです。「僕はこんなこと簡単にできるのに、お父さんやお兄ちゃんにはできないんだ。」みたいな。僕は性格が悪いので、人間の醜いところがよく見えたらいいな、と思ってものを作ります。調子に乗った子供の醜さとか、「子供に負ける」ということを極端に恐れる大人の醜さとか、逆に「子供に負けてあげる」ということを進んでする大人の醜さとか、ぜんぶ。

 

■ICC にて開催中の「車輪の再発明プロジェクト」では、「技法:(1) コイル、(2) 磁石、を与えられたものとせよ」というテーマに基づく「超超短距離電信装置」「Choose one, if you want.」「運動ーコイルと磁石の場合」の 3 作品が展示されているようです。これらの新作についてお話しいただけますか。

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これらの作品群は Jess Rowland らの平面スピーカーの研究 [1] を踏まえ、スピーカーの最小構成単位をコイルと磁石と捉えてスピーカーを再発明する試みとして制作されています。これらに用いられている技術要素は IAMAS 在学中から研究していたものです。アンテナなどの電波や電磁石の発する電磁気を作品制作に応用しようといろいろな実験を重ねていたのですが、これらはその成果とも言えるものですね。基礎的な知識のみでアンテナやスピーカーを自分の手で作りながら発見した現象を提示しています。

期せずしてこれらの現象は工学の世界では技術的に非効率であったり、より優れたものが発明されて忘れ去られていった技術の引き起こすものととても似通っています。現状用いられている音響技術によるものとは異なる音響体験を提示するこれらの作品群は城講師の推進する「車輪の再発明プロジェクト」の理念 [2] に沿って言うならば「ありえたかもしれない今」を提示するものといえるでしょう。

re-inventing

今回の ICC での「車輪の再発明プロジェクト」第 3 期展示の『(1) コイル、(2) 磁石、を与えられたものとせよ − 最小構成単位に分解されたスピーカーによって提示される“振動”』は、同プロジェクトと連携して、僕の作品制作の方法を“技法”として分離し、様々な人に作品を制作してもらうというものです。今回は車輪の再発明プロジェクトの所属学生もこの技法を用いて作品を制作しており、この技法による 7 点の作品が展示されています。

この“技法”という考え方は 1 期、2 期展示で展示された『予め吹きこまれた音響のない(もしくはある)レコード』や、『写植文字盤による多光源植字』、現在も同研究開発コーナーに展示されているクワクボリョウタ准教授の『針穴をあけた紙を通したRGB光源による網点プロジェクション』などの同プロジェクトが本年度の ICC で展示している手法を踏襲しています。

僕が作った技法を共有して異なる現れが見えるというのは、舞踏譜を記述して演者に上演してもらった時に、必ず演者によって異なるものになる、という一つの作品を作る上での協力関係とそれによる相乗効果にも似ています。

 

■今後のご活動の予定についてお話しいただけますか。

すでにご質問の中で話題にしていただいていますが、2016 年 2 月 28 日まで NTT インターコミュニケーション・センター(ICC)の研究開発コーナー「車輪の再発明プロジェクト」展示の中で、僕の提案した技法『「(1) コイル、(2) 磁石、を与えられたものとせよ」− 最小構成単位に分解されたスピーカーによって提示される“振動”』の展示が行われています。この展示も踏まえた研究会の記事も後日アップロードされる予定です。

また、僕の作品は展示されていない期間になりますが、3 月 5 日の午後 2 時から ICC で車輪の再発明プロジェクトの展示に関するギャラリートークが行われるので、そちらもよろしくお願いします。

2 月 25 日から 28 日の間岐阜県大垣市ソフトピアジャパンセンタービルで行われる「IAMAS 2016」にも、プロジェクトの成果発表と、パフォーマンス作品を上演の予定です。

また来年度では 5 月 8 日に八王子音楽祭で開催される「多摩美の音楽実験室 2016 堆積と分散」にパフォーマンス作品を出品の予定です。

この度はインタビューいただきありがとうございました。

 

[1] Jess Rowland, Flexible Audio Speakers for Composition and Art Practice, Leonardo Music Journal No. 23, MIT press, pp.33-36, 2013.
[2] 車輪の再発明プロジェクト 研究概要(http://www.iamas.ac.jp/projects/145

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